なんだか久しぶりの映画鑑賞です。ほんとのところ、ゴールデンウィークに突入した段階の土曜日に繁華街に出たくはなかったんですが、前々から観に行きたかった作品なのに、時間や場所、ついでに天候も不都合でなかなか観に行けず、今日訪れた新宿シネマカリテでは来週いっぱいで終了するらしい。その代わり、1日1回上映ながら、私にとってはとてもちょうどいい10時30分という絶妙な時間割。これを外すと観逃しそうなので、意を決してチケットを確保しました。
数日前の暑さが嘘のように冷たい風が吹いていますが、天気はいい。ちょっと厚めの服を着て、バイクにて移動。車道は極めて走りやすい。私が使っているルートは、新宿への抜け道として知れ渡ってしまったのか、日付や時間帯によってはやたら詰まるのですが、業務用の車輌が減ると交通量も少なくなるようです。思いのほか早く着いて、映画館で時間を持て余してしまった。
というわけで、約10ヶ月ぶりの新宿シネマカリテにて鑑賞した本日の作品は、『別離』『セールスマン』で2度アカデミー賞外国語映画賞に輝くアスガー・ファルハディ監督作品、成り行きの善行がひとりの男の運命を弄ぶ『英雄の証明(2021)』(SYNCA配給)。
この監督のイランを舞台にした作品は、特有の文化や規律がナチュラルに覗ける興味深さがあって、今回も日本との様々な違いと、意外な共通性が面白い一方、テーマと掘り下げ方は実に現代的で、決して他人事には見えない。出来心からいちどは着服しようとした拾得物を、有効に使えない、と判明したがゆえに持ち主を探し出し返却する、という行動に及んだ主人公。罪悪感とも表裏一体の行動は、賞賛を求めていたわけではなかったのに、その善行を一種、PRに使おうとしたひとびとのささやかな功名心が彼を英雄に祭りあげ、そしてある時点から突き落としていく。
ユニークなのは、SNSによる名声と中傷の氾濫を、SNS画面を用いることなく描いている点。海外マーケットに供給する上で、アラビア文字による画面が馴染みづらい、という判断があったのかも知れませんが、あえて用いないことで、その音もなく浸透していく影響力が実感しやすい。
イラン独特の文化、日常をきちんと打ち出しながら、表出するものは普遍的。アスガー・ファルハディ監督の作家性を駆使して描いた現代の『藪の中』と言おうか。結末は虚しいけれど、そのもたらす感情は奥深い。この監督の作品は、私の観た範囲ではハズレがありません……評価が高まって以降の、ヨーロッパで撮影された作品が手つかずなんですが、やっぱし観ておくべきだろうな~。
鑑賞後、まずは一点だけ、買っておきたい本があったので、久しぶりに紀伊國屋書店へ。いつの間にか改装を始めているみたいで、少々戸惑いましたが、無事に目当てのものを確保。
それにしても、こんなに人出の多い新宿を見るのは久しぶりです。基本的に私が来るのは平日の日中なので、増えるのは当然ですが、体感としてはコロナ禍以前の水準に近い。きょうは最近お気に入りの麵屋海神で食事するつもりでしたが、イヤな予感の通り、2階にある店舗に続く階段の入口まで列が繋がってる。試しに、五ノ神製作所のほうも様子を見てみましたが、こちらも当然のように長蛇の列。
この調子ではどこに行っても食べるまで時間がかかる、と悟り、駐車場からバイクを出して現地を離脱。空いてるようなら、つじ田でテイクアウトして帰ろうかな、とも思ったのですが、こっちも列がかなり伸びていたので、大人しく家に帰って、ストックしてあるカップ麺とおにぎり1個でお腹を満たすのでした。
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