静かな生活を掻き乱すもの。

 午前十時の映画祭12を鑑賞するのはプログラム切替直後の火曜日、というのがいつものスケジュール、なのですが、今回は発表された時間割とだいぶにらめっこした結果、切り替え翌日であるきょう、出かけることにしました。
 向かったのはいつものTOHOシネマズ日本橋――ではなく、TOHOシネマズ新宿。この時期に拠点を新宿に移すのも久しぶりです。そう、理由はひとつ、映画を観るついでにすぐそばの大久保公園で催される大つけ麺博に立ち寄りたいから。そのために、使い慣れたTOHOシネマズ日本橋を使わず、他の映画も上野や日比谷を外して、新宿優先で考えます。先に申し上げておくと、たぶん来週火曜か木曜に映画を観に行くのも新宿です。作品も確定してる。
 雨は上がってますが移動は今回も電車……何せ、TOHOシネマズ新宿近くでいちばんよく利用していたバイク駐輪場が閉鎖されてしまった。この時間なら確実に駐められる駐車場はひとつ知っていますが、映画館まで1kmは歩くのです。けっこう朝早く、移動がギリギリになるきょうは使えない。歌舞伎町寄りのエリアで使いやすい駐輪場見つけないとなあ……。
 鑑賞した今コマの上映作品は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作のひとつ、老教授の静かな生活を、マイペースな若者たちが掻き乱していくさまを描いた『家族の肖像』(東宝東和初公開時配給)
 ヴィスコンティなので、静かで思索的な作品だろうな、と適当に捉えていたら、なんか趣が違う。鹿爪らしさはありますが、話運びはコメディっぽい。まったく人の話を聞かない人びとが無遠慮に教授の生活に乱入し、教授を戸惑わせ感情的にしていく過程を、トーンは静かでもテンポよく描いている。何せ朝が早いので眠くなるのを危惧してましたが、そんなことは全然なかった。
 ただやはり内容は思索的。危険な背景を隠した青年とそのパトロンである貴婦人、その娘や友人たちとの理解を超える関係性に、次第に巻き込まれていく教授。トラブル続きのあとでたどり着く勢揃いの一幕で教授が語る、喜びとも諦念ともつかない感慨は、象徴的なラストシーンと繋がって意味深に響く。
 調べてみると、製作当時の世界情勢、社会背景も絡んでいて、奥行きがある。序盤はコメディのようでしたが、だからこその複雑さ、哀感を称えた名品でした。

 鑑賞後は当然のように大久保公園に向かい、開催中の大つけ麺博に立ち寄って昼食。朝方はまだ寒かったものの、この時間になると陽も射して暑くなり、人出もおとといよりだいぶ増えている。当初のお目当てだったお店は相変わらずの大渋滞で、けっきょく今回も別のお店を選ぶことになりましたが、そうして想定外の1杯に巡り逢うのもこのイベントの楽しさです。
 帰りは行きと違うルートを辿って家路に就く。フィットネスアプリを使って、歩いた距離と時間を測定しましたが、行きも帰りもそんなに変わりない。詰まるところ、どのルートを使っても、たぶん所要時間はそれほど変わりない……確証はありませんが、たぶんバイクを使って、いつも使う駐車場に駐めても、似たようなものだと思います。

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