狂信者か、聖人か?

 2ヶ月にいちどのお楽しみ、爆笑問題withタイタンシネマライブの開催当日です。在宅透析に切り替えて以来、スケジュールの調整がしやすいのを幸いと、ハシゴをするのがふたたび恒例になっている。今回も、時間割が発表されるなり、観たい作品とすり合わせてみた。
 何とかハシゴは出来る。が、時間がものすごくタイト。少なくとも、合間に夕食を摂りに行く、なんて物理的に不可能。
 ただ、今回絞り込んだ1本は、どうしても押さえておきたい作品でもある。先日も触れたとおり、ここしばらくはどーしても観ておきたい映画が陸続と封切られているので、この機会を逃すと本当にそれっきりになってしまう危険はある。お腹は空きますが、夕食は帰宅後までお預けにすることで覚悟を決めました。とりあえず、ポップコーンかなんかでお腹を満たしておけばいいのだ!
 午前中に諸々の用事を片付け、夕方からお出かけ。ハシゴをするときは基本電車利用です……正直、きょうは移動手段より陽気が悩みの種でした。夏日って言うけど、週末からは低温、という予報を考慮すると、帰宅時間には涼しくなってる可能性がある。とりあえず、半袖にGジャン、という格好で出かけました。念のために、鞄にはウルトラライトダウンをイン。そこまで冷えるかな、と疑いつつも。
 少しだけ早めに現地入りし、まずは本題の上映されるTOHOシネマズ日比谷を訪ねて、チケットぴあで購入したシネマライブのポイントを付与してもらう――直前にそんな時間は取れないくらいタイトなのです。この場合、上映終了のあとでも可能かも知れませんが、終わったらさっさと帰りたいし。
 手続が済むと、先に観る1本がかかっているTOHOシネマズシャンテへ。鑑賞したのは、2001年にイランで発生した娼婦連続殺人の、この地ならではの混沌とした顛末を、同国出身で北欧を拠点に作品を発表するアリ・アッバシ監督が映画化した聖地には蜘蛛が巣を張る』(GAGA配給)
 アスガー・ファルハディ監督作品を観てからというもの、年に1本くらいはイランを舞台にした映画を観たくなるようになってます。わりと社会派のサスペンスが多い印象ですが、その中に描かれる、馴染みの少ない文化や日常、価値観といったものが興味深く、けっこうクセになるのです。
 しかしこの作品、明らかにイランの映画ではない。恐らく現地ではまだ、こういう映画は撮れない、というポイントが冒頭からある。実際、撮影だけでも困難だったようで、わざわざヨルダンのロケ地をそれっぽく装って撮ったらしい。
 そうして、イスラム教ゆえの表現に対する厳しい視線をかわした本篇は、私がこれまでに観たイランの映画よりも遥かにグロテスクな様相が描き出されている。その意味では、私の観たいものにより近いんですが、しかしだからこそ重い。
 いわゆるミステリとしての興趣はないに等しい。かなり早い段階で観客には明かされますし、もう1人の主人公である女性記者も、早くに犯人像に肉薄する。ポイントはやはり、この事件を起こす犯人の心象と、イスラム社会――というか、聖地に生きる人びとの価値観です。
 監督は決してイランの政治や社会を批判することが狙いではない、と語っている。むしろそこに覗く、世界共通の問題こそが着眼のようです。でもやっぱり私は、これをイスラム社会、それも聖地という、より核心に近い場所を舞台に描いていることに注目してしまう。
 間違いなくひとりの特異な殺人犯を克明に描いたドラマ、しかしそれでも怖いのはこの行動が周囲にもたらす影響だった、と思う。私にはラスト数分がいちばん慄然としました。

 鑑賞後は取り急ぎTOHOシネマズ日比谷に移動。このあとは項目を改めて記します。たぶん明日に回すと思う……しかし、解っちゃいたけど、お笑いの前に観るには相応しくなかったなこれ……。

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