無事、作業は一段落しました――午前5時に。日付が変わった時点からここまでの作業量を考えれば、よく片付いたな、という心境ですが、しかし出来ればもっと早く終わらせたかった。なにせ今日は、ただゆっくり休んでいればいい、という訳ではない。スケジュールが判明した段階から変則スケジュールが確定しているのです。
とは言え、午前中には何にも予定を入れていない。作業終了とともに横になり、いつもよりやや遅くまで睡眠。朝食を摂り、もう一度横に……なったものの、いっかい起きてしまったためになかなか寝付けず、意識がなくなったのは11時過ぎ。家電量販店に買い物に出かけていた母が帰宅、昼食の支度を済ませて起こしに来た12時半まで、そっくり時間が消えたみたいな感じ。
もう仮眠を取っている時間的余裕はないので、そのあとは出かけるまで何となく過ごす……なにせ虚脱状態なので、ここがいちばんぼんやりしていた。
頃合いを見て出発。おおむね電車のなかなのでそれほど辛くはない、とは言え自宅から駅、駅から映画館まではちとキツい……と思いきや、この夏は気温は高いけど風はわりと柔らかく、長時間歩かなければそこまでしんどくはないのです。慣れすぎなのか?
行き先は今年2度目の池袋シネマ・ロサ、鑑賞したのは、怪奇ドキュメンタリーの元祖として誕生して24年、原型を完成させ、演出を降りてからもナレーターとしてシリーズのアイコンであった中村義洋が久々に演出した記念すべき100作目、監督の記憶に残る怪奇映像の背景を調べていくうちに根深い執念が紐解かれていく『劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100』(NSW配給)。
これを劇場で観ない、という選択肢は私にはない。まして、中村義洋監督の舞台挨拶があるなら尚更に。発売する26日0時前から瞬間にパソコンの前で待機して、時間になるなり即座に購入してやったわ。いつもなら仮眠を取っている時間帯に行動することになるけど、しかも寝不足の状態なんだけど、今日だけは耐える!
……やはり原点であり、ヒット作を幾つも生み出したひとは違う。『ほん呪』の基本を詰め込みながら、圧倒的なクオリティを誇る傑作でした。
かつて投稿されながらも不採用となった映像を確かめるための再調査の過程で浮かび上がる奇怪な事実、奇妙な法則性を持った悪影響。そして終盤にはきちんと、怪異の焦点となる場所への潜入、そして最も忌まわしい映像の開陳もある。
中村監督のしたたかさを感じるのは、このドキュメンタリーであるがゆえの怪奇ミステリー的な展開の中に、ちゃんと擽りを鏤めて緩急をつけていること。そのうえで更に、あえて劇中では言及しない怪異、うっすらと察せられる事実まであるので、繰り返しの鑑賞にも耐える仕上がりになっている。ラストのひと幕、それまでの事実と照らし合わせると恐ろしい背景に気づいて、なかなか慄然とします。
上映後はお待ちかねの舞台挨拶です。とにかくこのひとが生で観たくて意地で押さえたシリーズの看板、大半の作品のナレーションを務め、記念すべき巻の演出を担当した中村義洋氏、現行シリーズの演出であり本篇にも協力する藤本裕貴氏、同様に現行シリーズで演出補を務める男鹿悠太氏、そして今作の取材から加わった演出補の木勢まりあ氏。
劇中でも触れられていましたが、本篇の取材中はとにかく色々とあったようで、その苦労話を中心に話は進むのですが、ここでもやっぱりほぼ全巻を見届け、いまや邦画界のヒットメーカーとなった中村氏の話が面白い。特に、中村氏が意外とビビりだ、という点に笑わされてしまった。確かに劇中でも「この人、ヤバいところ来たがらないな」とは思ってましたが、カットされたところでも相当抵抗したり悲鳴を上げたりしていたそうな。実はこのシリーズが、初めて報酬を得て演出した作品という中村氏ですが、初期からプロデューサーに心霊スポットと呼ばれる場所に踏み込むよう言われるたびに抵抗していたらしい。そんな記憶はなかったんですが……たぶん当時はカットしてたんだろうな……。
ひととおりトークが済むと、観客からの質疑応答です。正直なところ、手を上げようか、だいぶ迷いました――なにせ、エピローグ部分の映像を見る限り、劇中では明かされていない事情に、最低でも中村氏と木勢氏のふたりは気づいている。あえて触れなかったのですか? と訊ねたかったのですが、やめておきました。それもまた趣。
質問の中で面白かったのは、今回の作品ではなく、シリーズのこれまでの作品でいちばん怖かった作品は? という問いに対する監督の答。何と中村監督、ナレーションの収録では、実際に吹き込む場面だけ同時進行で画面を見て、肝心の怪異が映っている下りはたいてい早送りにされてしまうんだそうです――そりゃそうだ、収録であって鑑賞会ではないのだから、必要のないシーンは飛ばすのも当然。それでも、中興の祖と言える児玉和土氏、そのあとを継いだ岩澤宏樹氏、菊地宣秀氏の作品にはけっこうゾワッとするものがあった、とのこと。具体的な作品は挙げていませんでしたが。
最後に観客も撮影可能なフォトセッションを経て、イベントは終了。次の上映回もイベントがあるということなので、早々に引き上げてきました。
そのあとは、池袋に来たらとりあえず買っていくのが私のお約束、なので西武の地下食品街まで足を伸ばし、かるかやの手打ちうどん2人前を購入してから帰途に就く。
そしてこれを書いている今現在、正直なところ、疲れがどっと噴き出てきております……土曜日はいつも、3時半まで深夜ラジオを聴いてから就寝するのですが、今日はもう深夜ラジオそのものをやめておくべきかも……。
『劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100』公開記念舞台挨拶のフォトセッション。左から男鹿悠太演出補、藤本裕貴演出協力、木勢まりあ演出補、中村義洋演出。
コメント