石川さゆりが歌います、『朝日のあたる家』。

 もう年明け最初の作業は始まってますが、それはそれとして映画は観る。
 本日の行き先はTOHOシネマズ錦糸町 オリナス。今回もまた、ここでなきゃいけない積極的理由はなく、上映時間が私にとって良かったのと、この界隈でよく足を運ぶ双麺というお店で昼食を採りたかった、という組み合わせで決定しました。
 いや、厳密にはもうひとつ理由がある。今日は映画を観たい、しかし今日は同時に、昨晩採った検査用の血液をクリニックに提出せねばならない。年末年始、そして休祝日を考慮すると、次の診察までに結果が届くには、今日には出さないといけないのです。しかも朝の方がいいので、映画を観に行くなら、移動の前に立ち寄る必要がある。そうすると、バイクを利用する方が都合が良く、駐車場の利便性も考慮すれば、錦糸町がいちばんちょうど良かったのです。
 いつもより早い時間だったせいか、クリニックの受付に誰もおらずちょっと焦りましたが、どうも搬入とか患者の出迎えとかで忙しかったようで、ほどなく戻ってきた方に採血と廃棄する針を託して、無事に用件は片づいた。いつもと違うルートでしたが、他の行き先よりも道は走りやすいので、余裕を持って現地に着きました。
 鑑賞したのは、世界中に熱狂的なファンを持つヴィム・ヴェンダース監督が日本を舞台に、役所広司演じるトイレ清掃員の穏やかな日常を詩情豊かに描いたPERFECT DAYS』(Bitters End配給)
 役所広司の演技が世界中の映画祭で賞賛されている、と聞いたときから絶対に観るつもりでしたが、正直、期待していた以上にいい映画でした。
 これといって派手な出来事はない。ひたすらに平山という、下町にひとり暮らし、日々渋谷の公衆トイレを清掃し、家に帰り休むだけの繰り返しを淡々と描いている。そこに、マイペースな若い同僚や、久しぶりに会う姪との再会といった細かな出来事、変化を挟みつつも、平山の世界は大きく変わることはない。
 ただ、その描き方が不思議なほど美しく詩情に溢れている。清掃中の周囲のささやかな出来事が胸を暖かくし、過去との邂逅が心を揺らす。そのさまを、極めて言葉少なな平山の表情と、彼の立場に寄り添った、繊細な映像で見せていく。本当に、派手なことなどないのに、惹きつけられてしまう。
 私としては、個人的に親しみのある場所や要素がやたら登場するのが嬉しくもくすぐったい。平山が生活し、職場である渋谷に向かうルートは、本篇を観ていた錦糸町からほど近いあたりですし、仕事のあとや休日に立ち寄るのが私にとって馴染み深い浅草。平山がたびたび自転車で渡っている桜橋など、私自身も何度となく利用してます。他にも、触れられないけど縁のある要素があって、どーしたって思い入れが強くなってしまう。
 しかし、そうした私個人の思い入れをそっくり取り除いても、リアルな生活感が見事に映画として昇華された傑作です。今年頭から2本連続で年間ベスト級の作品に出逢えて嬉しい。

 鑑賞後は予定通り、錦糸町駅前まで移動して、双麺にて昼食。珍しく冬季限定のつけ麺を食べてきました。
 そして、平山と同様にスカイツリーを見上げながら……は危ないので、気配だけ感じつつバイクを走らせ帰宅。

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