狂っているけど、純粋。

 本日は2カ月に一度のお楽しみ、爆笑問題withタイタンシネマライブ#87です。今回もハシゴする気満々で、映画館のスケジュール発表を待っておりました。
 しかし、発表された時間割には落胆せざるを得なかった。いちばん観たかった作品が、私の計画には入りにくい時間になってしまった。尺的に、映画館側も構成に苦しむだろうな、とは思っていたので甘んじて受け入れ……るのに少々悩みましたが、最終的には妥協点を見つけて、ハシゴする作品を決定。
 いつもより早めに仮眠を取り、さっさと起き出して電車を経由して向かったのはTOHOシネマズ日比谷。鑑賞したのは、『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス監督最新作、赤子の脳を移植された女性の奇妙な、しかしリアルを凝縮したような冒険を描いた哀れなるものたち(字幕・Dolby ATMOS)』(Walt Disney Japan配給)。実のところ、早めに観たくて今日の第2候補に掲げていた作品でしたから、そんなに不満はない。
 期待通り、いや期待を凌駕する傑作でした。『シェイプ・オブ・ウォーター』のテーマをより生々しく、しかし軽快に描いたような作品。
 行為は終始グロテスク、ただ一方で、とても純粋な欲求、好奇心の追求でもある。その危険な境界から、不幸な成り立ちで生み出された主人公ベラが世界を学び、その中に唯一の自我を見出していくさまに不思議なカタルシスがある。極端に誇張された“自分探し”の旅。
 映像がまた奇妙で印象深い。ベラを生み出した教授との生活を、随所で広角レンズを用いた白黒で描く一方、教授達の籠から飛び出した途端、非現実的な極彩色に変貌する。それまでの映像も奇妙ですが、いざ世界に翔びだしても、彼女の周囲の世界は異様な、唯一無二のヴィジュアルになる。そうして、良識や固定観念を逸脱した存在であるベラが、彼女なりのやり方で世界を知り、調和し、自分の道を見出していくさまは、まるで現実世界を舞台にした『不思議の国のアリス』と言うべきか。
 なにが凄いって、あれほど奇怪なヴィジョンなのに、そこで描かれているものの本質は決して現実を逸脱していないのです。とても遠いようでいて、不思議な感情移入を起こさせる、唯一無二の怪作。指原莉乃がナレーションを務めるCMを純粋に信じて観てしまったひとは相当に戸惑うでしょうけれど、騙されて劇場に足を運んでも、けっこう感銘を受けるかも知れない――受け付けなくて気分を害する可能性もありますけど、間違いなく傑作だと思う。

 鑑賞後は近場にて夕食を摂り、本日のメインイベントです。以降は別項目にて、明日アップします。

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