愛と運命のモザイク。

 実に3週間ぶりの映画鑑賞です。こんなに間が空いたのは久しぶりです。そして、解り易く禁断症状っぽくなってます……まあ、療養中も多忙のさなかでも、配信とかCSでむかし観た作品をわりとガッツリ鑑賞して、それなりに発散はしていたけれど、やっぱり大きなスクリーンがいい。
 天気は、予報では今週では珍しい悪天候。しかし、もはやあんまし気にしません。朝のうちはまだ大した降りではないものの、一応降られないルートを使って移動。ほぼ恢復したとは言え、まだなにが起こるか解らないし、労るところは労るのです。
 劇場はTOHOシネマズ日本橋。鑑賞したのは、午前十時の映画祭13上映作品、『男と女』のクロード・ルルーシュ監督が40年を超える年月と複数の国に跨がる4つの家族のドラマが交錯していくさまを壮大に描き出した愛と哀しみのボレロ』(日本ヘラルド初公開時配給。ちなみにリンク先は、6年前にデジタル・リマスター版が公開された際の公式サイトです。
 粗筋から察せられる雰囲気と長大さ故に、途中で寝てしまうのを半ば覚悟してましたが、何とか保った……見せ場の『ボレロ』のくだりがいちばんキツかったが。
 しかし実に滋味豊かな作品です。全体でひとつの物語を形成するのではなく、複数の家族のドラマを並行して描き、戦争や政治情勢の違いで各々の環境、心情が大きく変化していくのを明瞭に表現している。ヒトラーの前で演奏したことを誇っていた音楽家は、戦後それゆえにユダヤ系の人々の不興を買い、苦しみを味わう。こうしたドラマが縒り合わせられ、各々は最小限の共同体のドラマであるにも拘わらず、まるでもっと大きな世界そのものを描き出しているかのようです。
 それぞれは基本、独立して描かれているものの、しばしば交錯し、クライマックスで合流する。そこで大きな変化が起きるとか、何かが解き明かされる、といった展開はないものの、不思議と熱く迫ってくるものがあります。本物のバレエダンサーであるジョルジュ・ドンの20分近くに及ぶ圧巻の舞踏とも相俟って、説明はほとんどないのに見応えのあるシーンとなっている。
 ……とはいえ、正直、理解していくのが厄介な作品です。なにせ、親を演じていた俳優が、時代が変わると成長した子供を演じているので、しばしば混乱します。読み解きながら鑑賞するので、静かな描写ながら眠くなるようなことはなかったんですが、その努力が不要となるクライマックスで、溜まっていた疲れが噴き出して、だいぶ眠気に襲われたのでした……耐えきったけど。
 とはいえ、確かに3時間の尺が必要だった、重厚な傑作でした。しばらく頭から『ボレロ』の旋律が離れませんでした……そのせいで、ネットニュースで見たハリウッドザコシショウの名前が混ざって、最終的に奇声を上げて『ボレロ』を舞うザコシのイメージに変換されてしまった。

 鑑賞後、しとしとと雨の降るなか歩いて日本橋ふくしま館へ。今日からイートインに入っているのは創作麺 やま鳶。今回もまた、いつもと違うメニューが用意されていたので、堪能してきました。ここはどのメニューも基本食べやすく適量なので、思わずスープまで飲み干してしまうのだ。

 これで午前十時の映画祭13も残すところあと1本。どうやら無事にコンプリート出来そうです……“無事”と言っていいのかはちょっと疑問だけど。

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