プログラム切替直後の月曜日は午前十時の映画祭14を観に行く日です。そろそろ作業が佳境なので、来週あたりに回そうか、とも考えましたが、このあいだの粉瘤手術の件みたいなこともあるし、まだ追い込まれる前に行っておくことにしました。
劇場はいつも通りTOHOシネマズ日本橋。ここは駅からのアクセスが良好なので、電車利用でも訪問は楽……ただし、上映開始時間が9時前後だと話は別です。最近、このケースが増えて、ちょっと慣れてはきましたが、やっぱり基本は家にいる人間にはラッシュアワーはキツい。
鑑賞した今コマの作品は、小津安二郎ブロック2本目、残暑の関西を舞台に、愛に揺れる家族の姿を描く『小早川家の秋』(東宝初公開時配給)。ちなみに“こばやかわ”ではなく“こはやがわ”と読むそうです。映画本編の発音で気づきました。
遺作『秋刀魚の味』の1本前ということもあって、小津作品としては珍しいカラー作品。もともと絵画的な味わいのある小津作品ですが、色彩がある分、それをより実感します。しかも、舞台の一部が京都で、嵐山なんかも登場するため、なんとなく色彩を意識したロケーションにしている印象もなきにしもあらず。
物語は小津安二郎らしい家族ドラマ、しかし『宗方姉妹』以上に、変化していく日本人の家族観と、間近にある“死”を意識させる内容になっている。夫である小早川家長男の死後、身の振り方が定まらない妻・秋子のために小早川家の秋の親族が縁談を持ちかけるも、秋子は態度を曖昧にする。一方、小早川家の当主である万兵衛(二代目中村鴈治郎)は、家業の造り酒屋もそっちのけで、再会した妾の家に足繁く通っている。そんな彼を巡る顛末は、滑稽でもありますが、無常観も色濃く滲んでいる。
現代の人間の目から見れば、当時の“若い人”の像にもなんとなく偏見を感じる一方で、大きく移り変わろうとする時代の空気はくっきりと焼き付けられている。そして、恐らくはいま探しても、ほとんど見つからなくなった日本の風景。この佇まいに、シンプルに見蕩れてしまう。
小津作品の表現、価値観には古びた保守的思考がどうしてもちらつきますが、それを適度にオプラートに包み、一方で新しい世代の持ち込みつつある空気も共存させ、その対比に無常観を覗かせる。そうやってまとめていくと、実はとても小津安二郎らしい傑作と言えるのかも。
……ただ、この前の『宗方姉妹』でも思いましたが、やっぱりいつもより早い時間帯に観るのはしんどいです。いい作品でも、このテンポはどうしたって眠気に襲われます。もうちっと遅く、せめて映画祭のタイトル通り午前10時からにして欲しい……。
……あ、ちなみに見出しは、万兵衛の妾・佐々木つね(浪花千栄子)の家での描写を観た私の心の呟き。そりゃあ、あっても不思議ではないんでしょうけど。
鑑賞後、当初は毎度のごとく日本橋ふくしま館を訪ねようと考えてたのですが、何せ朝が早く、映画が終わって真っ直ぐ家に帰っても昼食に間に合う。母がそうめんを茹でる、というので、家で食べることにしました。今日からイートインに出店するらぁ麺おかむらは、ここと他のラーメンイベントで食べたことがあるので、たぶん新メニューはない。
……が、帰り際、ふくしま館の前を通りしな、店頭に貼られたメニューを見たら――食べたことのないメニューでした。一瞬、足踏みしましたが、母には家で食べる旨伝えてあるので、断念。先にメニュー確認出来てればなあ……。