私を(ニセモノの)月に連れてって。

 きょうは母が夕方から会合に出る都合で、非常時の付添がいないと実施を禁じられている在宅透析はお預けです。
 せっかく夕方からの時間が空くなら、この枠を使って映画を観に行こう、と考えました――どのみち、きょうは午前中に透析用資材の搬入に、3カ月に1回くらいのペースでクリニックの技師さんが実施する透析装置の点検作業があったので、午前中は家を出られないので、好都合でもある。
 ただ、観る作品を決めるのに時間がかかった。絶対的に押さえたい、というものは少ないけれど、ちょうどおんなじくらいに気になるものがやたら封切られてる。劇場界隈で飲食がしやすくて、かつ帰りが遅くなりすぎないほうが、などと条件を付けると、こっちはいいけどこっちは微妙、でも観たいのはこっちの方だし……と、迷いが止まらない。
 最終的にチケット購入に踏み切ったのは13時。私としてはだいぶギリギリに心を決めて、仮眠ののち、夕方に出かけたのでした。
 訪れたのは丸の内ピカデリー、鑑賞したのは、月着陸の映像はフェイクだった、というお馴染みの陰謀論をもとに、歴史的な月着陸計画の背後で行われていたもうひとつの大勝負を描いたフライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024・字幕・Dolby Cinema)』(Sony Pictures Entertainment配給)
 なにせ元ネタがアレなので、もっと皮肉の効いた内容になるかと思いきや、けっこうユーモアと誠実さのある、快いドラマでした。なおかつ、実際にこんなことがあったとしても不思議じゃない、と思わせるリアリティもある。
 元ネタのこともちゃんと熟知した上でやってて、しっかりキューブリックの名前も出してくるし、陰謀論ではお馴染みの要素もあっちこっちで立ち現れてくる。メインキャラクターは恐らくフィクションでしょうが、当時の広告戦略からすると“さもありなん”と思う描写が鏤められて、いちいちニヤニヤしてしまいます。
 一方で、本物のアポロ計画や、それに携わった人びとへのリスペクトも非常に感じる。決して笑い話になることのないアポロ1号の悲劇を、それに相応しいドラマとして取り込み、決して容易ではなかった計画に力を注いだ人々を軽んじてない。
 クライマックスのドラマが良くも悪くも(物語として)チープになってしまった辺りは、もしかしたら印象の分かれるところかも知れませんが、私は楽しかった。ずっとチラチラしていた要素がぜんぶ持っていく感じも楽しい。
 リアルなところはリアルに描きつつ、笑いや皮肉も細かに鏤めて、なおかつ現実に難事業に臨んだ人びとへの敬意も籠めている、快いドラマ。余韻がとても清々しい……ただ、果たしてラージフォーマットで観る必要があったのか、は疑問。宇宙開発のヴィジュアル、音響の完成度は高かったと思うけど、それを売りにしてる訳ではなかったしなー。

 鑑賞後は近くで夕食。久しぶりにつるとんたんに行こうか、それとも初めての店を利用しようか、だいぶ悩んだけど、けっきょくよく行くガード下のそばうどんの店で、人気のカレーうどんで済ませました。
 まだ駅前の本屋が営業時間内だったので、ちょこっと買い物をしてから帰宅……時間帯以外は、いつもの映画鑑賞とおんなじようなことしてたな。

丸の内ピカデリー、Dolby Cinemaスクリーン入口脇に掲示された『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024)』ポスター。
丸の内ピカデリー、Dolby Cinemaスクリーン入口脇に掲示された『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024)』ポスター。

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