ディストピア、ここに完成せり。

 プログラム切替直後の月曜日は、出来るだけ午前十時の映画祭14を観に行く日……“出来るだけ”に交代してしまいましたが、最近時間的に余裕がないことが増えたので、あんまし意地を張らないことにしました。
 ただいまのプログラムはグループ分けに関係なく全館共通なので、錦糸町や新宿を使ってもいい。しかし、新宿はバイクを使いたいけど昨今ゲリラ雷雨が怖い、錦糸町はちょっとたじろぐくらい上映開始が早い。結局、いつもと同じTOHOシネマズ日本橋へ。

 鑑賞したのは、1981年製作のシリーズ第2作、戦争によって更に荒廃した世界で、限られた石油を巡って熾烈な戦いを繰り広げる『マッドマックス2』(Warner Bros.初公開時配給)
 前作が超低予算にも拘わらず大成功したので、予算は一気に10倍だったそうです。実際、明らかにセットやカーアクションの迫力が激増してる。
 そして、ディストピア感が加速し、一気に私がリアルタイムで鑑賞した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『マッドマックス:フュリオサ』の世界になった。まだ画面作りは粗いですが、既に薄汚れたなかに閃く生命力の美しさが明瞭になっている。暴力描写もより容赦なくなってますけど、それもまた美学を感じさせる。
 基本的に、何かの教訓を与えるような物語でないのも近年の作品と同じ、しかしそこに1本通った芯が、細かなモチーフや人物描写に籠められた物語とも相俟って、唯一無二のロマンを醸成している。もはや変わり果てた世界で、前作の悲劇を引きずりながら、無頼に生き延びるマックスと、限られた資源を有効活用し、理想郷を目指して藻掻く人々。そして、欲望のままにそれを蹂躙する、個性の際立ったヴィラン。
 何よりもクライマックスの、独創的なカーアクションの見応えは絶品。もちろん21世紀に入ってからの2作品で、更にレベルアップしているのも間違いないんですが、現実と地続きのところで、人々が過去の財産に様々な工夫を凝らして武装し、極限まで死闘を繰り広げる姿が本当に凄まじい。ロマンスやドラマの予感を振りほどいて、無慈悲に易々と命が奪われている様に漂う無常感まで、いっそ美しい。
 1作目で提示した可能性を見事に、たぶんリアルタイムで鑑賞した人々の想像を超えて昇華させた、革命的な作品だったのでしょう。そのパワーが、いま観てもまったく衰えてない。劇的に面白かった。
 ……にしても、こうして観ると『北斗の拳』ってとことん、この作品に対するオマージュで出来てたのね。プロテクターにモヒカンはまだしも、なんかユリアっぽい人までいたわ……。

 鑑賞後は、毎度のごとく日本橋ふくしま館へ。先週、食事だけしに来たばっかりですが、老麺まるやがそこから今日まで出店しているのです。たまには他の店にも行かないと、と思いつつ、やっぱりここに足を運んでしまう。11時半の時点でチャーシューメンは売り切れ(たぶん最終日はもうチャーシューの仕込みが間に合わないのでしょう)、お土産も売り切れていた様子ですが、そのぶん大盛りで堪能してきました。

TOHOシネマズ日本橋、エレベーター向かいの壁に掲示された『マッドマックス2』上映当時の午前十時の映画祭14案内ポスター。
TOHOシネマズ日本橋、エレベーター向かいの壁に掲示された『マッドマックス2』上映当時の午前十時の映画祭14案内ポスター。

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