轟音で観る、迷える子羊の音楽。

 何だかんだで映画鑑賞に行くタイミングかなく、観たい映画は溜まってます。もうぜんぶフォローするのは諦めるとしても、問題は“どれを拾うか”です。上映時間が私にとって利用しやすい、なおかつ自分のなかでの優先順位が高いものを天秤にかけて、昨晩になってようやく決断してチケットを購入。
 訪れたのは、2ヶ月半ぶりのTOHOシネマズ上野。鑑賞したのは、『けいおん!』『平家物語』の山田尚子監督が初めて手懸ける完全オリジナルアニメーション、人が特有の色で見える少少女が、それぞれに秘密を抱える友達と始めたバンド活動を通して新しい世界を知っていく青春ドラマきみの色(轟音上映)』(東宝配給)
 久々に上野で鑑賞したのは、この作品が轟音上映でかかっていた、というのも大きい。TOHOシネマズ上野で轟音シアターという規格を採り入れたのはだいぶ前から知っていましたが、方向性ゆえに、他のラージフォーマットでかかる作品も多く、なかなか利用する機会が無かったのです。この作品はなにせ山田尚子監督が音楽を採り入れているわけですから、轟音上映の手応えを試すにはちょうどいい、と思ったのです。
 ……思った以上に激しかった。予告篇の段階で、思いのほか音圧が強くて度胆を抜かれたのですが、本編の音響がまたド迫力になってる。序盤、体育の授業でドッジボールをしているシーンがあるのですが、その1投目の衝撃に驚きました。女子高生の球威じゃねえよ。
 映画本篇は、繊細かつ意欲的な描写のオンパレード、といった趣。冒頭から独特な色彩と構図で主人公・トツ子の独特な感性を表現し、日常シーンも柔らかく、細かな線で可憐に描いていて、映像としての佇まいが素晴らしい。
 物語としては、細かなイベントはありつつも、決して派手なものはない。しかし、長崎と五島列島ならではの立地、空気感を活かした、青春を感じさせる出来事の爽やかさ心地好さ、ほんのりとした甘酸っぱさ。バンド仲間のきみとルイ、それぞれが抱える秘密の苦みを、あえて明確に描き出さず、感じさせる表現の距離感がまた巧みです。
 そして、そうした感情の揺らぎを経たクライマックスの演奏が圧巻。3人の個性を反映した楽曲のライブ感が、音でも映像でも精細に、そして感動的に表現される。このシーンは轟音上映で鑑賞してよかった、と心の底から思いました。本物のライブ観てるみたいだったよ。
『けいおん!』に似た題材に、様々なエッセンスを加えて膨らませた、監督の集大成めいた傑作。いい音響設備のある劇場とかで鑑賞するのがお薦めです。

 鑑賞後は、ちょっと悩みつつ、私としては利用する頻度高めな焼きあご塩ラーメンたかはしにて昼食。あごだしの味と、お店でもお薦めのお茶漬がお気に入りなのです。前は、新宿界隈で困ったときに、歌舞伎町店をよく利用してましたが、最近は上野店のほうによく立ち寄ってる気がします。
 食事のあとは、腹ごなしがてらに一駅分ほど歩いてから電車にて帰宅。

TOHOシネマズ上野、スクリーン8入口手前に『きみの色』チラシ。轟音やで。
TOHOシネマズ上野、スクリーン8入口手前に『きみの色』チラシ。轟音やで。

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