そして、美しい化け物になる。

 今日も映画鑑賞です。ただし、またぞろ母と一緒です。
 朝いちばんで訪れたのは、こちらもまたしても、のTOHOシネマズ上野……狙ったわけではなく、スケジュールの兼ね合いです。もともと母親も前々から観たがっていた作品で、時間的に余裕のあるいま、観たい欲求が募っていたところ、スケジュールを色々と調べていた私が、いま丁度いい場所と時間でかかってるよー、と唆したのです。私自身、劇場で観ておきたい作品だったし。
 朝早めに起きて鑑賞したのは、日本での映画興収歴代1位達成の偉業を成し遂げてなおロングラン継続中、吉田修一の小説を『フラガール』『悪人』の李相日監督が映画化、歌舞伎の世界における芸と血の束縛を生々しくも美しく描いた国宝(2025)』(東宝配給)
 ……映画館で観るのは諦めてたんですよ。しかし11月になってなお上映が続いていることで、こりゃ正月興行まで生き残るかも、と感じて、年まで越してしまった。ここまで来たらもう、観ないで素通りは出来ない。ひとりでも観に行くつもりでしたが、母がその気になったので、私もとうとう脚を運んだ次第。
 なんかもう、言うまでもないですが、これは大傑作。
 恐らく原作のかなりの部分を端折り、整理したこと、原作未読でも察せられる。でもそれが的確で、梨園の世界における芸と、血筋というものの厄介さが見事に表現出来ている。才能に恵まれながらも、もともとは門外漢であったため、まともな役を与えられない宿命を背負った喜久雄と、血筋には恵まれながら、兄弟のように育った喜久雄の才能に圧倒される俊介。決して正面切って争う場面は多くないけれど複雑な感情が、ひしひしと伝わってくる。
 でも何より素晴らしいのは、歌舞伎の表現です。演目の内容や主題を過剰に説明しすぎず、でもある程度は理解出来るように見せつつ、その演技の繊細さ、美しさを、工夫を凝らしたカメラワークで表現する。本筋を無視しても、目を奪われる映像なのに、そこにドラマとしての感情も籠められていて、余韻が深い。
 こと圧巻なのは、予告篇などでも採り上げられる《曽根崎心中》でしょう。何が、と詳しく書くとネタばらしになるので――って、半年以上映画館で流れて史上最高の成績を上げてる作品に今更ではあるけれど、それでも観るなら最初は僅かな予備知識のまま、素直に震えるべきだと思う。
 一方で、ラジオにて伊集院光が語っていた違和感も確かに覚えて、完璧、というのはちょっと躊躇う。けれど、映画という、観客を考えればどうしても尺に限りのある媒体で表現するにはこれが最善でしょう。
 3時間近い尺に尻込みしてしまいそうになるけれど、観ればほぼあっという間です。引き込まれ、魅せられているうちに過ぎていき、深い余韻を残す。邦画史上に名を残すべき傑作……おととい鑑賞した『劇場版アドリブ大河』で、とにかく明るい安村がやたら引用したがってた心情も解るわ。
 半年を過ぎて上映規模が縮小するどころか、上野ではまだ1日3回という、尺を考えれば充分すぎる回数がかかってるし、IMAXなどのラージフォーマットでの上映もふたたび始まって、まだ勢いが収まる気配がありません……っていうか、私も余裕があれば、IMAXとかでもういちど観てみたいな、と思ってます。この映像の美しさ、繊細さは、ハイレベルな環境で鑑賞していい。

 少し前からケンタッキーが食べたくて仕方なかったので、昼食は御徒町駅そばの店舗で購入し、自宅で摂りました……ケンタッキーを買って電車に乗るのはちょっとしたテロ行為だ、という自覚はあるけれど、自宅の近くにはないから致し方ない。

TOHOシネマズ上野、スクリーン7入口脇に掲示された『国宝(2025)』チラシと副音声案内。
TOHOシネマズ上野、スクリーン7入口脇に掲示された『国宝(2025)』チラシと副音声案内。

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