着けた火は簡単にゃ消せないよ。

 本日もまた映画鑑賞です。
 ただし時間は、夕方……というかもう陽も落ちてる18時50分。大本命がこの時間なので、何かハシゴできるものはないか、といちおう調べてみましたが、どうもいまいち動きづらい。というわけで、この1本に絞ることに。
 赴いたのは丸の内ピカデリー別館、Dolby Cinemaスクリーン。鑑賞したのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品、かつて革命の闘士だった男が、我が子の危機に奔走するワン・バトル・アフター・アナザー(字幕・Dolby Cinema)』(Warner Bros.初公開時配給)

 ……これは、本っ当に観ておきたかったのです。日本公開前の時点で既に高評価が届いてたし、何より私が最も好きな俳優ベニチオ・デル・トロが出ている。
 そもそもラージフォーマットで観たかったけれど、どうしてもタイミングが合わず、気づけばノーマルスクリーンばかりになり、近場での上映が完全に終わりそう、というところでようやく意を決して観に行こうとしたのですが、諸般事情で断念。かなり悔いを残しました。
 ただ、ちょこっとだけ希望を抱いていたのは、本篇の公開時期がワーナーの日本における配給事業終了の直前だったこと。
 本国ではワーナー本体も買収の話が進んでいて、いちどはネットフリックスでまとまりかけていましたが、敵対的買収を仕掛けたパラマウントが、条件面でかなりワーナーに配慮しており、現時点では予断を許さない。今年から日本でのワーナー作品の配給は東和ピクチャーズが担う、という発表もあったのですが、この情勢だと、いつ方針が変わるかも解らない。
 しかし、いったん契約を結んだからには、東和ピクチャーズ側としても、実績を作っておきたい、という意識はあると推測される。だとしたら、現在の契約で配給可能な作品のなかで、話題性のあるもの、まだ集客力に期待が持てるものなら、早くに“再上映”という展開に踏み切るのでは、という目算が私にはあった。
 まさか、ここまで思惑通りになるとはさすがに予想外でしたが、ともあれ、折角かけてくれるのだから、この機会は逃したくない。
『罪人たち』は通常スクリーンがメインのようですが、本篇はラージフォーマットで展開している。観に行くとすればラージフォーマットにしたい、と元から思っていた私としては、これもまた嬉しいところ。幸いに、行動範囲内のラージフォーマットではいちばんお気に入りの丸の内ピカデリー Dolby Cinemaでかかっていて、しかも時間は18時50分、となれば、私にとって平日は透析の用意でバタバタしている時間帯なので、透析を休む土曜日が最善のタイミング。
 というわけで、予定が出た時点で今日の鑑賞を決断して、チケットが購入可能になるなり即、確保したのでした。

 そして念願叶って鑑賞した感想は……確かにすごかった。
 しかしこんなに言葉に困る映画もなかなかない。移民や人種問題を採りあげているけど、必ずしも問題提起を目的としてるんじゃなくて、中心となるディカプリオの恋人のいささかエキセントリックな行動、彼女が去り父と娘だけになったあとの父親のザマとか親子関係など、あちこちにシニカルな眼差しが籠められている。
 物語としては父娘が因縁のある警官によって追われ、それぞれに繰り広げる逃走のくだりがメインなんですが、とにかくディカプリオ演じる父親が必死で無様で、緊迫してるのに終始、苦笑いさせられる。この父親に限らず、人間は理想の姿で居続けられないことを突きつけるような物語の構成、展開は、共感出来るキャラクターがあんましいないのに妙に気持ちをざわつかせるものがあります。
 終始、先の予想が出来ない展開と、突然の変化に驚かされますが、その意外性とままならない状況が、奇妙な緊張感と共にユーモアを滲ませる。命のやり取りだってあるのに、軽快かつ地に足のついたような不思議なトーンが忘れがたい。
 風変わりで無軌道に見えるけれど、それ故に様々な味わいがあちこちから上ってくる。アクションにサスペンス、ファルス、親子のドラマに青春ドラマ、男女の愛憎までごった煮にしているのに、喧嘩せずに混ざり合う唯一無二の逸品。それ故に、誰でもハマる、というわけではないけれど、観たあとに確実に爪痕を残す作品だと思う。
 他の作品すべて観たわけではないので断言はしかねますが、作品賞は本当にこれと『罪人たち』の対決になるのかも。

 上映終了は21時40分。家に夕食があるので、寄り道はせずに帰宅。

丸の内ピカデリー、Dolby Cinemaスクリーン入口脇に展示された『ワン・バトル・アフター・アナザー』ポスター。
丸の内ピカデリー、Dolby Cinemaスクリーン入口脇に展示された『ワン・バトル・アフター・アナザー』ポスター。

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