『デス・レース2』Blu-ray版(Amazon.co.jp商品ページにリンク)。
原題:“Death Race 2” / 監督:ロエル・レイネ / 原案:ポール・W・S・アンダーソン、トニー・ジグリオ / 脚本:トニー・ジグリオ / 製作:ポール・W・S・アンダーソン、ジェレミー・ボルト、マイク・エリオット / 製作総指揮:ロジャー・コーマン、ポーラ・ワグナー / 撮影監督:ジョン・マッケイ、ロエル・レイネ / プロダクション・デザイナー:ジョニー・ブリード / 編集:ラデュ・アイオン、ハーマン・P・コーツ / 衣装:モイラ・アン・メイヤー / キャスティング:ジャン・グラサー / 音楽:ポール・ハスリンジャー / 出演:ルーク・ゴス、ローレン・コーハン、ショーン・ビーン、ヴィング・レイムス、タニット・フェニックス・コプリー、パトリック・リスター、デオビア・オパレイ、フレデリック・コーラー、ロビン・シュー、ダニー・トレホ、ジョー・ヴァズ / インパクト・ピクチャーズ/チェスナット・リッジ製作 / 映像ソフト発売元:NBC Universal Entertainment Japan
2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:?
日本劇場未公開
2011年2月2日映像ソフト日本盤発売
2016年11月2日映像ソフト最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|ベストバリューBlu-rayセット(シリーズ1~3同梱):amazon]
Blu-ray Discにて初見(2021/1/26)
[粗筋]
少し先の未来。アメリカの刑務所は収容能力を大幅に超過し、民間企業が営利目的で運営する時代が訪れていた。ウェイランド社もまた、陸地から長い橋で繋がれたターミナル島刑務所を所有している。
あるとき、カメラクルーが入っているなか、乱闘騒ぎが発生した。このとき、中継していたテレビ番組の視聴率が劇的に上昇したことで、レポーターを務めていたセプテンバー・ジョーンズ(ローレン・コーハン)は一計を思いつく。刑務所で公式に囚人同士の殺し合いをさせ、それを中継する、というものだった。
マーカス・ケイン(ショーン・ビーン)のもとで働くカール・ルーカス(ルーク・ゴス)は、任された銀行強盗の実行中、警察官を殺害してしまう。辛うじて仲間たちは逃がすことに成功したものの、自身は追い詰められ逮捕されてしまう。
そうしてルーカスは、ターミナル島刑務所に収容される。乱闘騒ぎ以来、この刑務所では定期的に《デス・マッチ》と名付けた囚人同士の格闘を放送していた。プロデューサーとしてこの番組に携わっていたセプテンバーは、、ウェイランド社長(ヴィング・レイムス)に収益の低下を咎められ、視聴率を上げる算段に頭を悩ませていた。見た目もよく体力のあるルーカス《デス・マッチ》の花形として期待されたが、暴力に関わることを望まないルーカスは出演を断る。加えて、彼が口を割ることを恐れるケインに狙われることを考えると、テレビに出演させるのは得策ではない、と所長(パトリック・リスター)は判断した。
だがある日、《デス・マッチ》のカードに、リスト(フレデリック・コーラー)が選ばれる。非力な彼ではとうてい勝てない、と思ったルーカスは衝動的に競技場に飛び込んでしまう。リストを救うことは出来たが、結果的にルーカスは自らの居場所をケインに知らせてしまった。
一方、セプテンバーは所長を追放すると、刑務所の囚人を利用した新たな番組を起こす。アイランド島の広大な土地と、再処理目的で搬入されているモンスター・カーを駆使し、殺し合いをも厭わない殺人レース――《デス・レース》である。5回優勝すれば命と自由が手に入る、という、願ってもない報奨に、囚人たちはこぞって参加を望んだ――ルーカスさえも。
むろん、ケインもこの好機を逃すはずがない。ルーカスは自身の命を確実に狙う者たちと、文字通り命懸けのレースに臨んだ――
[感想]
B級映画の帝王と謳われたロジャー・コーマンの代表作のひとつ、『デス・レース2000』を『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督がジェイソン・ステイサム主演リメイク、ヒットとなったのが2008年、本篇はその2年後に製作された、リメイク版の世界観を踏襲した続篇であり、前日譚にあたる物語になっている。……まだるっこしく説明を添えてしまうのは、本篇の発表後、ロジャー・コーマン版の世界観を受け継いだ新たな続篇が発表されているせいだ。私はロジャー・コーマンのオリジナルおよび続篇には接していないが、それでも本篇が、監督も主演も異なるとは言い条、アンダーソン監督&ステイサム主演作品の続篇としてリリースされている、という点は<押さえておいたほうがいい、と考えたが故である。
……と、くだくだと述べたものの、しかし本篇はロジャー・コーマン版はおろか、ジェイソン・ステイサム主演版すら、必ずしも観ておく必要はないと思う。なにせステイサム版は劇場公開時に観たきりなので、ぼんやりとしか記憶がなかったのだが、その程度の感覚でも問題なく本篇は愉しむことが出来る。
調べてみると、ステイサム演じる主人公が《デス・レース》に参加するに至る経緯や、サブキャラなどに共通する点があるため、続けて観ればそれなりに驚きや楽しさもあるのは間違いなさそうだが、本篇はあくまで、飛び道具あり、ラフプレー上等、機会があれば殺し合いにも発展する、容赦ゼロのカーレースが最大の見せ場であり、その面白さを観客に味わわせることを第一義にしている。そこが楽しみで鑑賞する分には、予習も必要はないだろう。
とはいえ、レースのスリルを盛り上げるための道具立てもしっかり行っている。本篇の場合、かつてのボスに狙われる、という主人公ルーカスの物語に、《デス・レース》誕生に至る過程を盛り込んでいるあたりが絶妙だ。実のところ、肝心の《デス・レース》に突入するまでに本篇の半分近い尺を消費しているのだが、こうした背後の駆け引きを織り込み、どのように刑務所での営利目的による《デス・マッチ》が《デス・レース》に変化していったのか、を見せることで、中弛みを最小限にして、クライマックスへと繋いでいる。プロローグで、決して必要とは言えないカーチェイスをあえて盛り込んだ辺り、シリーズらしい見せ場を適宜用意する、娯楽映画としての作法を弁えていると思う。
惜しむらくは、なかなかに個性的なキャラクターが多数揃っているのに、その個性を見せ場で充分に発揮している者が少ないことだ。個性を発揮出来るとすれば、それこそ《デス・レース》での駆け引きなり戦い方なり、になるはずだが、やり口が全員似たり寄ったりで、主人公ルーカスと、前作にも登場する14K、終盤まで彼らに牙を剥くビッグ・ビル(デオビア・オパレイ)あたりくらいしか印象に残らない。サポート役に回るゴールドバーグ(ダニー・トレホ)やリストも多少存在感を示すが、その個性が引き立っているとは言いがたい――むしろあの出番と位置づけで印象を残すダニー・トレホのアクの強さにちょっと感動すら覚えてしまう。
もうひとつ残念なのは、終盤のドラマの雑さだ。ここでの展開が、前作に繋がっていくことが窺えるが、劇中で行われていた仕掛けにだいぶ無理がある。あの状況で、ああした計画を考え、実行するのはさすがにちょっと不自然だろう。展開としては痛快なのだが、いまいちスッキリしないのは、早足で語られるなかにも収まりの悪さが残ってしまうせいだ。もっとキャラクターが際立っていたり、ある人物が想像を超えるしたたかさを示すような描写が組み込まれていれば、力業で押し切れたのではなかろうか。
やや辛い書き方をしてしまったが、しかし前作で感じた面白さの本質をきちんと踏襲していることは間違いない。観終わってなーんにも残らないが、観ているあいだは興奮と、ある程度の爽快感は得られる。いささか痛みを伴う描写が少なくないので、耐性のないひとは注意が必要だが、手堅く作られた続篇と言える。少なくとも、ジェイソン・ステイサムという、いるだけで作品に芯を通してしまうスターを欠いた状態で、ここまで面白くしたのなら上出来だろう。
関連作品:
『デス・レース』
『カオス』
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』/『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』/『サイレントヒル』/『ピラニア3D』/『ロード・オブ・ウォー―史上最強の武器商人と呼ばれた男―』/『インビクタス/負けざる者たち』/『ムーランルージュ!』/『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』/『マチェーテ』/『紀元前1万年』
『デス・プルーフ in グラインドハウス』/『トランスポーター3 アンリミテッド』/『ワイルド・スピードMAX』/『ワイルド・ストーム』
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