深夜の格闘。

 このところ、ベランダ側でしばしば奇妙な物音を聞くことがあった。そのたびに様子を窺うものの、正体が把握出来ず、首を傾げていたのです。
 昨晩、その正体が判明しました。

 ドブネズミでした。

 透析を済ませて部屋に引き上げ、パソコンを起動して作業を始めようとした矢先に、背後で物音がしたのです。振り返ると、障子を駆け下りていく大きな影が見えてしまった。
 そこからは大騒ぎです。2階のちょっとしたホール的な一画に逃げこんだのは間違いない、けどとりあえず我が家にはねずみ取りの類などない。殺鼠剤は、飼い猫が謝って口にすると一大事なので仕掛けられない――まあ、我が家の唯一の猫は、カリカリしか絶対に口にしないので、カリカリのような形状でなければ問題ないでしょうけれど。
 そこで、私の透析医材を梱包してあった段ボール箱を並べ、その上に両面テープを貼って罠を作り、残りの箱で枠を作り、ホールの一画だけ囲ってみた。とはいえ、両面テープの粘着力では捕獲は難しいでしょうし、段ボールの仕切りも乗り越えてしまう可能性は高い。
 深夜に母子でどうしようか、と思案していると、騒ぎに驚いたのか、Gが1匹這い出てきた。仕留めるついでに、ふ、と思いついて、ネズミが逃げこんだと思しい物陰に撒いてみた。
 ちゃんと、出てきた。
 死にはしないけれど、やはりあの臭気に恐れを為したらしい。ホールには1箇所だけ窓があり、あわよくば夜中に逃げてくれないか、と考えて開けておいたところ、どうやらあちらも脱出したがっていたようで、別の窓に飛びついている。ただしこちらは横長の窓ガラスをやや重なる形で並べ、ハンドルを回して閉める《ルーパー窓》というもので、しかも網戸が嵌め殺しでついていて、デカいドブネズミが通りぬける隙間などない。そこへ殺虫剤を吹きかけて誘導、開けておいた普通の窓から追い出すことに見事成功した。
 慌てて窓を閉め、ようやくひと安心……深夜のことゆえ、仕掛けた罠はそのままにして、母子共々部屋に引っ込みました。普段は入口を少し開けたままにして、猫が出入りできるようにしてあるのですが、ちょうど私の部屋に寝ていたので、普段は母の部屋に置いてある餌とトイレを移し、閉めておくことに。この日に限り、自由な出入りは諦めてもらいました。

 ……それにしても、そうじゃないかとは思ってたけど、やっぱりうちの子はネズミを捕らないらしい。もういい歳であることを差し引いても、虫だろうが何だろうが捕獲してるところを見たことがないので、当然といや当然である。
 まあ、何も捕らなくてもいいのです。そのまんま、変なものを口にすることなく、長生きしてください。

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