第3回は《松葉牡丹の君》。刑事の端崎馨は、腹痛で苦しんでいるところを介抱してくれた、襟首に松葉牡丹の柄をあしらった和装の女性に感謝を告げたい、と友人の探偵・祝左右馬に手助けを求める。左右馬は手がかりとして示された雑誌記事の写真に映る姿に心当たりはない、と断るが、嘘を聞き分ける鹿乃子の耳は、左右馬の言葉が嘘であることに気づいたが、どうして長い付き合いの友人に嘘をつくのか、鹿乃子は理解できずに思い悩む。
原作第1巻の、実は先週の誘拐事件以前に登場するエピソードに、第2巻の要素や描写を採り入れ、脚色部分が多くなってます。
それでも原作読者として、嫌な印象は受けない。だって、ちゃんと原作の雰囲気や精神を踏襲してるから。プロローグの朝の会話、付け加えたススキのお茶というモチーフ、骨董商とのやり取り。ちゃんとそれぞれのキャラクター性を反映して掘り下げられ、なおかつ、鹿乃子の能力の本質を更に明確にしている――なにせ、鹿乃子の能力と、それに対する左右馬のスタンスは完璧に原作通りでそつがなく、本当に文句がない。左右馬と馨との友情を描きつつ、打算的に見えて極めて思慮深く心優しい左右馬の本質も窺える好篇なので、遅ればせながら挿入してくれたのは嬉しい。
ただ残念なのは、前回でターゲットとなった千代です。思い込みが激しいがとても素直な彼女のキャラクターは、ドラマのみで作品を知ったひとにも好評らしいですが、実はこ今回、千代が鹿乃子とのやり取りで交わした会話は、原作では彼女が活躍するエピソードに入っていたものでした。ここで使用した、ということは、スッキリ飛ばされたか、このあとのエピソードと絡めるかたちですっ飛ばされた可能性が高い……ちょっと残念ではある。
ただ、原作を敷衍した会話によって、鹿乃子が考えたことのなかったことに導く、重要な役割を与えていて、決して千代のことも疎かにするつもりはない、というのは感じる。予告から窺える次回のエピソードを考えれば、そのあとに短いけれどちゃんとした見せ場も用意できるはずだしね……それを飛ばされちゃうのはちょっとさみしいが。サイドストーリー短篇を同時進行で撮れるほどの余力はなさそうだしなあ……。
色々書きましたが、今回も原作の主題をきちんと留めた好篇に違いはない。何より嬉しいのは次回、私が観たくてたまらなかった《人形殺人事件》をやってくれることです。予告観てて思わず「おおおお!!」と声が出てしまいましたよ。果たしてどの程度原作通りなのか。舞台が九十九夜町を離れる(はずの)代わりに、原作ではピンポイントで登場する名キャラが登場するのも見所。既に公式サイトで発表されている粗筋を確認したら、すごーく納得のいくキャスティングだったので、ますます楽しみである。出来れば2話使ってやってほしいくらいだけれど、まあそこまでは望むまい。せめて原作の、ミステリとしての、物語としての鮮やかさが再現されてますように……。
『嘘解きレトリック 第3話』
嘘解きレトリック - フジテレビ
嘘解きレトリック - オフィシャルサイト。毎週月曜よる9時放送。鈴鹿央士、松本穂香
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