原作の大一番、《人形殺人事件》後半です。離れに残された血痕について、本当のことを話さない品子。祝左右馬が証拠を探し求めるなか、浦部佳乃子は品子の“嘘”と対峙する。
後半も基本、原作準拠です。やっぱり、原作のままだとけっこう大掛かりなセットを組まねばならないところは簡略化してますが、だいぶ頑張りました。
大筋は原作をなぞりつつも、序盤、雅と刑事のやり取りをドタバタ劇のように織り交ぜ、そして台詞をうまく組み合わせて、鹿乃子と左右馬、それぞれの奮闘を実にうまくドラマティックに見せてます。北乃きい演じる雅は、私のイメージより弾けすぎだったんですが、この後半部分の演出にはむしろハマっている。全体的に、原作以上の食わせ者になってるのもいい。
けっこう受け入れがたい背景部分を、説明としてはキュッとまとめたのが意外ではありました。かなり特異なシチュエーションなので、関係者の心情をもうちょっと伝わりやすいよう、精細な映像で丁寧に説明すると予想していたのです。ここが納得できるかどうかで、品子の心情に理解できるか否かに差がつき、評価が割れそう。出来れば、過去の部分で、ある人物とのやり取りをもうちょっと印象的に見せた方が良かったのではなかろうか。
とはいえ、舞台装置が大きく、このシリーズを実写化する上でハードルが高いエピソードを、共通のセットやロケを巧みに組み合わせて、うまく映像化できたと思います。鹿乃子の奮闘にはこれまでのエピソードで積み上げた説得力がありましたし、そんな彼女の個性や意思を汲んだ左右馬の、道化っぽいけど思慮深い名探偵っぷりを表現できているので、充分いい出来だと思う。きちんとラストシーンを再現してくれたのも嬉しい。
次回は、手鏡を巡る事件らしい。原作では《人形殺人事件》より前にあって、鹿乃子の心を揺さぶるエピソードです。てっきり飛ばすのかと思ってましたが、順番を変えてきたか。
……というか、もしかしてこのドラマ、原作を半分くらいしか消化せずに終わるつもりかも知れない。1エピソードに対してけっこうな尺を費やしているし、このペースではたぶん5巻の途中くらいまでしか出せない、というか、この先に手を出すと、丁寧に描けなくなる恐れがある。あえて半分くらいに留めて、好評なら残りのエピソードをシーズン2で、みたいに目論んでるんだろうか。当初の期待よりも遙かに原作リスペクトが深いので、また新たな期待をし始めてます。果たして。
『嘘解きレトリック 第5話』
嘘解きレトリック - フジテレビ
嘘解きレトリック - オフィシャルサイト。毎週月曜よる9時放送。鈴鹿央士、松本穂香
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