『それぞれの孤独のグルメ 第六話 神奈川県平塚市の豚バラ大根とシイラのフライ』

 今回のゲスト主人公は2人、名優・平田満と、子役の斎藤汰鷹。妻を亡くしたばかりの老紳士は、妻が手伝っていたこども食堂を何気なく覗き込んだとき、興味を持ってやって来た少年に引っ張り込まれるように調理に参加する。
 日々の食事を“孤独のグルメ”として楽しめるのは、それはそれで幸せなことで、あまり食事を楽しめない種類の孤独に苛まれているひとも少なくない。孤立しがちな現代の子供の受け皿として機能するこども食堂は、それこそメインシリーズでは扱い方が難しい。1回限りの主人公たちと井之頭五郎の存在が交錯する、というスタイルを取ったこのシリーズでないと駄目、という点で、これも特別編としてのこのシリーズの本懐と言えるのではなかろうか。
 メインシリーズはあっちこっちで何かしらに巻き込まれる五郎さんも楽しみ処ですが、今回は平田満演じる老紳士も巻き込まれてる。そういや五郎さんって料理してるところ見たことないな、とは思ってましたが、やっぱり経験なかったか。平田満共々、なんだか解らずに手伝わされ、空いた腹を、自分たちが手伝った料理で満たすのもまた一興。
 しかし、やっぱりこのエピソードは、このところ孤独で味気ない食事をしているふたりのゲストが、互いの立ち位置からこの食事に価値を見出しているのが面白い。やっぱり食事は出来たてが嬉しいし、もう食べられない、と思っていた味に巡り会うのは喜びです。シイラという珍しい食材も、そのスパイスとしてちょっと存在感が薄れるくらいに。ちなみにシイラは、以前は見た目と、水死体についてくる不吉さから敬遠されていた魚ですが、ハワイでは《マヒマヒ》の名で高級魚として食され、日本でも近年、その味が認められて、食材として扱われることが増えたようです……って、私はこの辺の知識をどこで仕入れたんだろう。《マヒマヒ》は確認してから書いたけど。
 基本的に主人公たちは会話を交わさない。最小限の言葉だけを交わす。ひとりひとりで味わい、頭の中で楽しみながら、それでも大勢でテーブルを囲む暖かさに浸る。メインシリーズとは更に毛色が違う感じになりましたけど、これもまた、《孤独のグルメ》というフォーマットがあってこそのドラマだと思います。
 次回は比嘉愛未演じる客室乗務員。『YOUは何しに日本へ?』でときどき海外のCAが通う日本の食事を紹介してもらう、ということをやってましたが、案外、あそこから着想してたりして。違うか。

テレビ東京開局60周年連続ドラマ 孤独のグルメ特別編 ドラマ24「それぞれの孤独のグルメ」 | テレ東・BSテレ東 7ch(公式)
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