丸の内ピカデリー、Dolby Cinema入口脇に掲示された『エクスペンダブルズ ニューブラッド』Dolby Cinema限定ポスター。
原題:“Expend4bles” / 監督:スコット・ウォー / 脚本:カート・ウィマー、タッド・ダガーハート、マックス・アダムス / 原案:スペンサー・コーエン、カート・ウィマー、タッド・ダガーハート / キャラクター原案:デイヴ・キャラハン / 製作:ヤリフ・ラーナー、ジェイソン・ステイサム、ケヴィン・キング=テンプルトン、レス・ウェルドン / 製作総指揮:アヴィ・ラーナー、トレヴァー・ショート、ボアズ・デヴィッドソン、ロバート・ヴァン・ノルデン、ジェフリー・グリーンスタイン、ジョナサン・ヤンガー / 共同製作:ロバート・アール、ジゼラ・マレンゴ、マット・オトゥール / 撮影監督:ティム・モーリス=ジョーンズ / プロダクション・デザイナー:リッキー・エアーズ / 編集:マイケル・J・ドゥーシー / 衣装:ニール・マクリーン / キャスティング:エレイン・グレインジャー / 音楽:ギヨーム・ルーセル / 音楽スーパーヴァイザー:ライアン・スヴェンセン / 出演:ジェイソン・ステイサム、シルヴェスター・スタローン、カーティス・“50セント”・ジャクソン、ミーガン・フォックス、ドルフ・ラングレン、トニー・ジャー、イコ・ウワイス、アンディ・ガルシア、ランディ・クートゥア、ジェイコブ・スキピオ、レヴィ・トラン、シェイラ・シャー、エディ・ホール、ルーシー・ニューマン・ウィリアムズ、ダレン・ノップ、ダン・チューポン、マイク・メラー / ニュー・ボヤナ・スタジオズ/テンプルトン・メディア製作 / 配給:松竹×Pony Canyon
2022年アメリカ作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:林完治 / R15+
2024年1月5日日本公開
公式サイト : https://expendables-movie.jp/
丸の内ピカデリーにて初見(2024/1/6)
[粗筋]
リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)は苛立っていた。同棲するパートナーのジーナ(ミーガン・フォックス)と朝から揉めているさなかに《消耗品部隊》のリーダーであるバーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)に連れ出されたかと思うと、酒場でちょっとした賭に負けて奪われた指輪を取り戻して欲しい、という下らない話だった。
しかもけっきょくはそのまま、新たな任務に引っ張り出されてしまう。その内容も、バーニーと付き合いの長いリーとしては眉をひそめる者だった。リビアの将軍が持つ核ミサイル起爆装置がラフマト(イコ・ウワイス)という武器商人が率いる部隊に奪われるのを阻止する、というもので、ラフマトの背後には正体不明のテロリスト《オセロット》があるらしい。かつて《オセロット》を追った《消耗品部隊》は罠に嵌まり、バーニーを残して壊滅状態となった因縁がある。バーニーが、チームでも特に付き合いの古い自分に相談もなくこの案件を引き受けたことがリーには心配だったが、作戦には参加した。
一同がチーム所有の戦闘機で現地に到着したときには、既にラフマトの一味は基地を掌握、将軍を脅し起爆装置を奪うところだった。ラフマトの部隊は《消耗品部隊》の戦闘機にすぐさま砲撃を始め、バーニーが戦闘機を操縦する傍ら、リーたちは一瞬着陸したタイミングで2台の特殊車両を下ろし、地上から反撃する。
ラフマトに起爆装置は奪われたものの、あと一歩で取り押さえられる、というそのとき、バーニーの戦闘機が砲撃によって深刻なダメージを受ける。リーは奪還を中止しバーニー救出に走るが、その目の前で戦闘機は地上に墜落した。
リーは復讐に燃えていたが、今回の任務の依頼人であるCIAのマーシュ(アンディ・ガルシア)はリーを作戦のメンバーから外し、バーニーに代わってジーナに部隊の指揮を委ねた。作戦行動を離脱し、目的を果たせなかった失策はリー自身も認めており、その判断に異を唱えず、リーは部隊を離れる。
だが、それでもリーは行動した。ジーナと同居していた部屋に潜入し、機密報告を盗み見て作戦行動の細部を把握すると、ジーナに自分の代わりとして託したナイフに発信器を仕掛け、部隊の行動を追跡する。
リーはタイに渡り、バーニーがかつてその凄腕ぶりを吹聴していたデーシャ(トニー・ジャー)という男に接触すると、彼の協力で部隊を追う。
だがその頃、ジーナ達が率いる部隊は既に、危機に陥っていた――
[感想]
前作から約9年振りの復活を遂げたシリーズだが、率直に言えば、ファンが満足する内容、出来映えとは言いがたい。
大きな理由は、かねてから噂のあった通り、シリーズの発案者であり、旗振り役であったシルヴェスター・スタローンが一歩引いた立ち位置になったことだろう。粗筋にも記したような展開なので、出番は乏しくなる。
その代わり、シリーズ初期からスタローン演じるバーニー・ロスの右腕を務めていた、ジェイソン・ステイサム演じるリー・クリスマスが中心人物となった。どんな経緯でそうなったのかまでは把握していないが、ステイサムが製作にも名前を連ねているあたり、作品の実現にも尽力したのではなかろうか。
その結果なのか、或いはどこかから提示された条件であったのか、本篇は実質ジェイソン・ステイサムの映画になっている。チームとしてのエクスペンダブルズは稼働しているが、前作までに比較すると少々面子が物足りなく、何らかの企みで容易に翻弄されている様がどうにも不甲斐ない。その点、中盤でいちどメンバーを外され、ほぼ単独行動となっているステイサム=クリスマスは獅子奮迅の活躍ぶりだ。単独で敵の懐に潜り込んでいくその戦いっぷりは、ステイサム単独主演作の趣を呈している。ステイサムのファンとしては、序盤のドラマから胸のすく活躍ぶりに充分すぎるほどの満足感が味わえるはずだが、アクション・オールスター・ムーヴィーとしてこのシリーズを楽しみ、新作の登場を待っていたひとは楽しめるかどうか。確実に、キャストのなかでは断固ステイサムを支持している私でさえ、これはどうか、と首を傾げるほどだ。
もうひとつ気になるのは、物語の舞台の狭さである。旧作は国境を幾度も跨ぎ、或いは戦場を横断したりと、そのキャストに相応しい派手な活躍ぶりだったが、本篇において“
取り柄と言えば、第1作に近い流血ぶりで、ハード・アクションとしての趣を取り戻したことと、《エクスペンダブルズ》というよりジェイソン・ステイサムの映画として観れば、かなりの充実感が味わえることだろう。それでも舞台の少なさ、アクションの趣向の乏しさは不満として残るが、ステイサム主演作のやや予算のかかった方の作品、と捉えれば楽しめる――欲しがってんのはそれじゃない、というツッコミはどうしても免れ得ないが。
たぶん、誰が悪い、というより、かつてほどアクション映画中心のスターは現れにくく、そこにいま最も近く、現役で実績を持つのがジェイソン・ステイサムだった、というのが大きいのだろう。ブルース・ウィリスは引退し、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーも作品数を減らした。アクション映画で人気を博しても、そこに縛られることを望まない俳優の方が多い。時代が変わったのだ。
関連作品:
『エクスペンダブルズ』/『エクスペンダブルズ2』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
『トータル・リコール(2012)』
『MEG ザ・モンスターズ2』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』/『大脱出』/『ミュータント・タートルズ(2014)』/『AKIRA アキラ(1988)
アクアマン』/『トリプルX:再起動』/『キャッシュトラック』/『ブラック・ダイヤモンド』/『ワイルド・スピード SKY MISSION』/『SAW5』/『キングスマン:ファースト・エージェント』/『マッハ!参』/『マトリックス レザレクションズ』
『ソードフィッシュ』/『オーシャンズ8』
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