原題:“Jaws” / 原作:ピーター・ベンチリー / 監督:スティーヴン・スピルバーグ / 脚本:ピーター・ベンチリー、カール・ゴットリーブ / 製作:デヴィッド・ブラウン、リチャード・D・ザナック / 撮影監督:ビル・バトラー / プロダクション・デザイナー:ジョセフ・アルヴス・Jr. / 編集:ヴァーナ・フィールズ / 音楽:ジョン・ウィリアムズ / 出演:ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス、ロレイン・ゲイリー、カール・ゴットリーブ、マーレイ・ハミルトン、ジェフリー・クレーマー、スーザン・バックリニー、ジョナサン・フィレイ、クリス・レベロ、ジェイ・メロ、テッド・グロスマン、ピーター・ベンチリー / 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ / 映像ソフト発売元:NBC Universal Enterainment Japan
1975年アメリカ作品 / 上映時間:2時間4分 / 日本語字幕:飯島永昭 / PG12
1975年12月6日日本公開
午前十時の映画祭10-FINAL(2019/04/05~2020/03/26開催)上映作品
2017年11月8日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|Blu-ray 廉価版:amazon]
TOHOシネマズ錦糸町 オリナスにて初見(2019/5/07)
[粗筋]
アメリカ東海岸にあるアミティ島は、独立記念日を過ぎると海開きになる。だがその直前、浜に女性の遺体が上がったことで、にわかに不穏な影が立ち込めた。
喧騒を厭い、ニューヨークから転勤したばかりの警察署長マーティン・ブロディ(ロイ・シャイダー)はサメの被害と判断、すぐに遊泳禁止の措置を執ろうとしたが、市長(マーレイ・ハミルトン)はじめ議会は猛反対した。この田舎町では夏場は書き入れ時であり、海に入れない、となれば観光客は遠のく。
議会は、サメを捕獲した者に3000ドルの賞金を与える、という広告を出し、海開き前の収束を図った。サム・クイント(ロバート・ショウ)をはじめ多くの賞金目当てのハンターが集まり、アミティの海は俄に騒然となる。
ブロディの不安をよそに、ハンターたちは1匹のイタチザメを捕獲した。これで解決、と市長たちは胸をなで下ろすが、調査のためにやって来た海洋学者マット・フーパー(リチャード・ドレイファス)は遺体の噛み痕と口のサイズが合わないため、犯人は他にいる、と断言する。
その晩、フーパーがイタチザメの腹を開くと、やはり人を食べた痕跡はなかった。ブロディがフーパーと共に周辺の海の調査に赴くと、そこには地元のヴェテラン漁師ベンの船が漂流していた。フーパーが潜り、船底の様子を探ると、そこには大きな裂け目があり、ホオジロザメと思しきサメの歯が残っていた。
しかしフーパーは、裂け目からベンの遺体が現れた瞬間にサメの歯を落としてしまう。そのために、ブロディとフーパーの直訴にも拘わらず、市長は「証拠がない」として海開きを強行してしまった――
[感想]
原点にして既にサメ映画全部入りだった。
昨今も『ロスト・バケーション』のような王道から『MEG ザ・モンスター』のような破天荒な大作が撮られ、『シャークネード』シリーズのような怪作が何本も作を重ねるほど愛されるサメ映画だが、並べていくと、たとえばドラマの見せ方などは異なれど、その恐怖を演出するための基本要素はみな一緒であることに気づく。そして、その基本が、たぶんこうしたサメ映画の端緒となったはずの本篇に、既にほぼすべて詰まっているのだ。
最初の唐突で謎めいた犠牲、危機を知らずに大挙する観光客が、目の前で発生した惨劇にパニックを起こし逃げ惑う。接近する恐怖を水中にいるサメの目線で描写し、被害を傷口で描写するのではなく、海面に広がる血で表現する。水中銃やサメ檻、退治するための毒薬など、表現手法やガジェットが、現実にしっかり取材しながら適切に配されている。
そのうえ、人物造型もうまく考えられている。主人公となる警察署長・ブロディはもともとよそ者であり、地元に溶け込もうと腐心している段階だ。そんな立ち位置の彼だからこそ、サメの脅威に対して積極的な策を提案する一方、そのデメリットを訴える街の人々に主張を貫けず煩悶する。利己的な判断が事態をより悪化させる、というのは災害を扱った映画のお約束に近いが、ブロディのキャラクター設定が自然にその道筋を作っている。、
終盤でそのブロディと共にサメ討伐に赴くチームを組むことになる、ハンターのクイントと海洋学者のフーパーの組み合わせも絶妙だ。フーパーは専門家として、詳しい情報からブロディを動かし手助けする役割だが、解剖中にサメから出る体液で転倒したり、巨大ザメ出没の重要な証拠を取り落としたり、とドジをして事態を予測不能にもしてくれている。クイントはサメ騒動に集結する荒くれ者を代表するインパクトを初登場から示す一方、、専門家ながらどこか頼りないフーパーと対立したり、妙なところで意気投合したり、とその人間関係で味のある見せ場を作ることにも貢献している。最も純粋な責任感に駆られたブロディも挟まったこの3人の組み合わせが、次第に明白となっていく敵の凶暴さとも相俟って、終盤の展開を予測不能に、観る者の目を惹きつけるものにしている。
現代のようなCG技術はなく、開発したサメのギミックも決して理想的には機能しなかっただろうこの時代に、これほどのスリル、これほどの迫力を生み出してしまった創意工夫には敬服するしかない。完成から半世紀近く経とうとしている今、もっとスマートに、もっと自然に表現する手法、技術は幾つも開発されているし、前述した作品のようにそれを活かした作品も多数撮られているが、それでもなおインパクトと説得力を損なっていない本篇は、これからも時代を超えていく傑作、と言い切っていいかも知れない。
関連作品:
『激突!』/『未知との遭遇 ファイナル・カット版』/『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』/『宇宙戦争』
『フレンチ・コネクション』/『オール・ザット・ジャズ』/『スティング』/『アメリカン・グラフィティ』/『ピラニア3D』/『M★A★S★H マッシュ』/『卒業』/『アメリカン・ギャングスター』/『ダーティハリー2』
『ファイナル・プロジェクト』/『ファインディング・ニモ』/『オープン・ウォーター』/『ロスト・バケーション』/『MEG ザ・モンスター』/『アクアマン』
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