今年の2月9日に、ジャズピアニストのチック・コリアが亡くなりました。
貪るように聴きまくってる、というわけではないけれど、ジャズでも好きなミュージシャンが何人かいて集中的に聴いている私にとって、初めて手に取ったタイトルがチック・コリアの『フレンズ』というアルバムでした。
もともと名前自体は知っていた。島田荘司の初期短篇集『御手洗潔の挨拶』に収録された短篇や、長篇『異邦の騎士』のなかでチック・コリアの楽曲に触れているのです――と言っても、少々ねじれているのは、物語のなかで言及しているのはチック・コリアのピアノではなく、彼の結成したユニットのなかでも人気の高いリターン・トゥ・フォーエヴァーなのです。前者では『第7銀河の讃歌』を演奏する場面があり、後者はタイトルをRTFの名盤『浪漫の騎士』にあやかっている。それで興味を抱き、ジャズに触れてみよう、と思ったとき、まず手を出したのがチック・コリア単独名義の『フレンズ』だったのです。なんで肝心のRTFでなかったのか、は覚えてません。たぶん、当時よく通っていたレコード店には置いてなかったのでしょう。
正直に言えば、『フレンズ』は最初、あまりしっくり来なかった。なにせ内容について知らないまま、選び方も解らないまま買ったので、そもそもの惹かれるきっかけだったギターすら参加していないアルバムだったとは知らず、その穏やかな曲中心の構成が私にはハマらなかった。
しかしその後、ようやく『第7銀河の讃歌』や『浪漫の騎士』を聴くことが出来、いわゆるジャズのイメージとは異なる攻撃的な音作りに魅了された。そこから、RTFに近い方向性だったエレクトリック・バンドを聴き、更に遡ったチック在籍時代のマイルス・デイヴィスのアルバムでストレート・アヘッドの好さを知って、次第に編成にこだわらず聴くようになっていった。この頃になって、最初に買った『フレンズ』がいまさらながらツボに嵌まってきて、いまでは最も愛する1枚になっている。
同じくマイルスのバンドに参加していたハービー・ハンコックなども聴きましたが、未だに私がいちばんたくさんの音源に接したジャズ・ピアニストは、チック・コリアなのです。いま、私のiTunesのライブラリにたくさんのジャズが入っているのも、その入口にチック・コリアがいて、インプロヴィゼーション、同じ曲でも異なる解釈をしていく面白さを教えてくれたからです。
もう新たな音源を聴くことが出来ないのが寂しい。
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