基本的にはいいと思うんだけど……。


『さだまさしデビュー50周年記念トリビュート・アルバム「みんなのさだ」』

 デビュー50周年記念日にリリースされるさだまさしトリビュート・アルバム、公式ファンサイトの通販で予約してあったので、前日に届きました。ちょうど階下でレコーダーの整理をしていたところだったので、まずはオーディオで聴いてみたかったところを優先的につまんで、それから自室にてパソコンで聴きました。
 ……とりあえず正直に記します。三浦大知の『風に立つライオン』、私はどうにも許せません。
 それぞれのアーティストの持ち味でアレンジするのは構わない、けどこの曲はすべてがひとりの人間が、特定の人物に向けて記した手紙、という体裁になっている。だから、言葉がきちんとひと繋がりでないと、まず意味を為さなくなってしまうのですが、一節の終盤をコーラスで別に録る、ということをして切り離してしまっている。お陰で、すべての言葉が上っ面だけになってしまった。個人的に、こういうのがいちばん許せない。これなら、テーマに沿って歌詞を整理して、歌としての体裁を思いっきり整えてくれた方がまし。三浦大知の歌の巧さも声の良さも知っているだけに、もったいないし、いっそ腹さえ立ってくる。
 そういう意味で、主題と重要なフレーズのみを残し、実質新曲として作られたMOROHA『新約「償い」』のほうが遙かに誠実で意欲的。令和版、と銘打っていたので、どういうことかと思っていたら、これは見事な着眼。きちんと出来事を現代的にし、なおかつMOROHAらしいスタンスで切々と訴えかける。それでいてメッセージ性はオリジナルに沿い、より深化もさせている。どうせ変えるならここまでして欲しい――ただ、世間的にはこっちの方が物議を醸すかも知れないけど。
 他は文句なし。トリビュートアルバム発売、という話だけで、誰が参加するのか発表されてなかった時点から『案山子』はたぶんこの人だろ、と信じていた槇原敬之はじめ、ほぼすべてしっくり来る人に割り振られている。特に、私はちゃんと聴いたことがなかったT字路sによる『まほろば』の衝撃が強烈だった。この曲がロックであることはTHE ALFEEが前のトリビュート・アルバム『さだのうた』で証明済ですが、こっちは激しくブルースです。他にも、しっとりとしながらも軽快になった折坂悠太『主人公』とか、コード進行をがらっと変えたwacci『関白宣言』、解釈、アレンジの面で意外性がありつつも納得のいくものが多い。
 ……でも、そういう意味ではやっぱり三浦大知の『風に立つライオン』はもったいないんだよなあ。『Amazing Grace』を採り入れることも踏襲して、リスペクトは感じるんだけど、なんで歌詞をこんな風に扱っちゃったかなぁ……正直なところ、このアレンジに抵抗が強すぎて、ひととおり聴いたあともう1回流すのを躊躇うくらいだったりする。

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