レンタルDVD鑑賞日記その699。

 2010年公開の映画『桜田門外ノ変』を月額レンタルにて鑑賞。1860年、時の大老・井伊直弼を水戸浪士17名が暗殺した政変を、吉村昭の小説をもとに、『男たちの大和』などの佐藤純彌監督が時系列を相前後する語り口で映画化。
 ……なんで唐突に? とお思いでしょうが、わたしもそう思う。たぶん公開当時から気になってて、DVDリリースされたタイミングでリストに登録したのが、ずいぶん時間をかけてリストを上がってきたのでしょう。
 とにかくやたらとキャストが豪華で、かつ近年としては重厚感のある作り。わざわざ桜田門のセットを用意して撮影した襲撃のくだりを冒頭30分ほどで処理し、そのあとは襲撃に至る経緯を随所で振り返りながら、襲撃者たちが辿った顛末を追う、というちょっと意外な語りかたをしている。指揮者として関わり、生き残った二名を除けば最後まで逃亡した関鉄之介の視点で綴ることで、事件前後の日本の状況を俯瞰するような作りになっているのが面白い。
 その後の諸外国との関係性や幕府、朝廷の推移を見ると、実は継嗣問題がなければこの事件も違うかたちになっていた、とも読める。一時期は奸臣のように語られていた井伊直弼にしても、ただ私腹を肥やすことを考えていたわけではない、とも読み取れる描写はなかなか公平だと思う。それぞれの立ち位置で日本を憂い、最善の道を探った結果の襲撃が、思いも寄らぬ多数の犠牲を出してしまう様に、言いようのない虚しさが漂う。
 丁寧で重々しすぎるナレーションや、細かに挟まれる安易な合成のせいもあって、“贅沢な再現映像”っぽさが出てしまっているのがちょっと惜しい。でも見応えのある作品でした。

 ほんとは今日は映画館に出かけるつもりで、いちおうスケジュールもチェックしてあったんですが、私にはどーしても観たい、というほどの作品ではなかったため、いまいち気乗りせず、取りやめてレンタルで済ませた次第。

コメント

  1. […] 原作:吉村昭(新潮文庫・刊) / 監督:佐藤純彌 / 脚本:江良至、佐藤純彌 /  […]

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