本当に殺す必要はあったのか?[レンタルDVD鑑賞日記その814]

 もう連休中はあんまり遠出したくないので、本日の映画鑑賞はレンタルDVDにしました。2020年度のアカデミー賞で6部門ノミネート、助演男優賞&歌曲賞に輝いたのになんでかレンタルでのリリースになってしまった『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』を鑑賞。1960年代、社会主義の革命を標榜し黒人や貧困層に支持された政治組織《ブラックパンサー党》の指導者であったフレッド・ハンプトンと、FBIに内通して党の情報を漏らしていた男の苦悩、葛藤を描いたサスペンス。
 実話がベースになっているそうですが、どの程度事実に沿っているかは解りません。しかし、この通りだとすれば、党も警察もFBIもやりすぎです。どちらも行動を起こす必要性に駆られていた、とも言えますが、それにしても当時の深刻な状況を窺わせる。
 作品としての焦点は、“ユダ”となったビル・オニールが、FBIの要請によって潜入しながら、次第にハンプトンに感化され、それでいて裏切り続けることへの葛藤と、標的となるフレッド・ハンプトン自身のカリスマ性と、しかし運動の過程で抱く苦悩です。ただの小悪党に過ぎなかったビルが、ハンプトンの思想に共鳴して煩悶する様が痛々しい。そしてハンプトン自身も、民衆を鼓舞する激しい言動の裏で、人格者でもあり、それゆえに悩んでいる姿も描かれる。確かに、このとき暗殺されていなかったら“ブラック・メシア”になっていた可能性はある。
 エンタテインメント的なトーンを保ちつつ、キング牧師やマルコムXに比べると知名度に欠く――そこにはあまりに若すぎた、という事情も含まれていそうですが――運動家の姿を、かなりリアルに感じさせる1本。レンタル版の映像特典として、スタッフ、キャストがハンプトンについて語るくだりも併せて観ておいたほうがいい。

 ちなみにこの作品、現在はPrime Videoでも鑑賞可能……さっき検索かけて気づいたんだよ……月額レンタルのリストに入れたときはまだ配信してなかったし……。

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