解ってるんなら考えてくれぇぇ。[レンタルDVD鑑賞日記その821]

 6月14日に、2022年12月リリースの『封印映像62 かよこにきけ』を鑑賞。学生時代の友人同士の飲み会に借りた一室で参加者を襲う恐怖《レンタルスペース》、動画撮影のためにドライブしていた男性3人の不可解な体験《看板》、奇妙な写真の背景を探ったスタッフが偶然に収穫した体験談と動画《石妖》、怪奇映像の蒐集が趣味だった男性と、投稿のその後を追った《かよこにきけ》正・族2篇の全5篇を収録。
 ……作りが雑だなあ、というのが率直な感想。それは冒頭の《レンタルスペース》から露骨に現れている。借りた部屋で飲み会をする男女3人の会話が白々しいのはもう仕方ないとして、そこからの展開は決して悪くないのに、見せ方、タイミング、そしてリアルに見せるための工夫、ぜんぶが足りない。
 色々ありますが、いちばん引っかかるのは、酩酊した女性参加者を男性が送っているあいだに、部屋で待っていたもうひとりの女性が怪異を目の当たりにして逃げ出す。このとき、男性が回していたカメラは、体調を崩した女性を介抱するときにテーブルの上に置かれ、そのまんまで投男性が部屋に戻るまで廻り続けている。残っていた女性が目撃した怪異はきっちりカメラが捉えていますし、それがぼんやりと消えるのも捉えていますが、問題は次です。
 その後、怪異がある姿で登場するのですが、実はこれが起きる場所も、カメラの画角に入っている。ということは、それが出現する際、起きたであろう変化をカメラが記録しているはずなんですが、そこに言及がない。あり得ないけど突然に現れた、というでも、ゆっくり現れた、でもなく、男性が戻ってくるといつの間にか変化が起きている。なんで過程を確認してないのだ。仮に投稿者本人や、映像に出ていた3人が確認してなかったしても、そこまで観るのが取材であり検証ではないのんか。あまりにも筋が通ってなさ過ぎる。
 続く《看板》、現象的には面白いんですが、それに対する投稿者やその友人たちの反応がいちいち不自然。まがりなりにも動画配信をしているなら、その状況の不自然さをもうちょっと理解し説明する努力をするはず。加えて、奇妙なことが起きたときの驚くタイミング、反応がことごとく変。信じる以前の話で、シンプルに演出がなってない、と言うほかない。
 そして《石妖》は、顔出しするスタッフがあまりに適当。怪異にも見えない“心霊写真”の投稿で腰を上げるのも変ですし、そこから撮影場所で取材した人物がたまたま動画付きで異様なエピソードを持ってる、という展開もだいぶ不自然。そしてそれら以上に、スタッフ山口の言動が必要以上に観る者を苛立たせます。いまその質問する必要はないし、現象を再現出来るか調べる、と言い出しておいて、明らかに映像と違うことをして何も疑問を覚えない。そのあとAD玉置に向かって「少しは自分で考えろよ」と注意しますが、考えなきゃいけないのはお前のほうだ
 唯一、前後篇で展開される表題作はまあまあ面白い。やっぱり演技は下手だし状況の不自然さは拭えないし、確かめなきゃいけないことがほとんど無視されてることに苛立ちますが、怪異そのものと展開の、底が見えない不気味さは決して悪くない。一部が過去の取材に基づいている、という内容ゆえ、このところナレーションのみ参加のAD田中が久々に顔を出すのも、前々から観ているひとにはちょっと嬉しい。
 アクがあり刺激も強いエピソードを収録していて、ホラーにするための努力は感じるんですが、出来がまったく追いついてないなあ、という感じ。スタッフはもっと他の怪奇ドキュメンタリーとか、優秀なホラー映画を観たほうがいいと思う。観てこれなら、掘り下げがどうしようもなく足りてない。

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