日本列島は台風の連続襲来であちこち影響が出まくっております。
私は……あんまり影響はありません。電気や水道に影響が及ぶ可能性は危惧していますが、避難することにはならなそう。ていうか、うちに避難指示が出るような状況になったら、たぶん東京ほぼ終了です。そんなところに住んでますから、そもそも心配はしてません。
が、やっぱり外出はちとしづらい。先週半ば頃に出ていた天気予報では今日あたりが雨の真っ盛り、いざ近づいてみると晴れマークと雨マークが並ぶような有様になっていますが、それでもいつ、どれくらいの規模で降ってくるか解らない、となると、お出かけには躊躇します。
で、どうせ家にいるなら、と昨日届いたレンタルDVDを鑑賞したのです。作品は1988年香港作品、『少林寺』シリーズで一躍その存在を知らしめたジェット・リーが自ら監督、第二次大戦後の混沌で親しい者を虐げる米軍に立ち向かう青年の戦いを描いたアクション映画『ファイナル・ファイター 鉄拳英雄』(TWIN初公開時配給/JVD映像ソフト日本盤発売)。
ぶっちゃけ私自身予備知識は皆無、ただジェット・リー初期の作品だし監督までしてるし、という理由でリストに入れてあった作品でした。しかも調べてみても情報がだいぶ錯綜している。DVDそのものや日本の各種データベースでは1988年作となってますが海外のデータベースだと1986年(『阿羅漢』と同年)、スタッフの表記もあちこち食い違ってる。そのうえ、日本で公開されたのは、日本のデータベースにある製作年から10年も経過した1998年。なんか、色々あったのを想像せざるを得ない。
しかし公開が遅れたのは、たぶんシンプルに、出来があんまり良くないから。かつてのカンフー映画によくあった、虐げられた者が拳で反撃する、という構図なのですが、その理由付けがだいぶ乱暴すぎる。この当時、米軍が中国にてここまで横暴に振る舞っていたのか私には解らないのですが、それにしたって、ここまで権力を持っている理由もよく解らない。終盤の重犯罪揉み消しも凄まじいですが、妊婦を乗せた人力車を妨害するくだりは、たとえ主人公側の動機付けにしたって胸糞が悪すぎる。
かといって、正直主人公側にもいまいち共感しづらいのです。多くの点では米兵たちの行動に問題があるけれど、それへの反発だとしても主人公もたいがい身勝手であとさきを顧みていない。特にスパーリングのくだり、仕事として引き受けたんだから、ちゃんと指示に従わないとダメだろ。結果、どっちもどっち、という感覚に陥って、アクションの爽快感もカタルシスもあんまし味わえないのです。たぶんこれなら、ブルース・リーやジャッキー・チェン初期の無理矢理な展開の方がまだまし。
それでもアクションの迫力と見せ方のこだわりは悪くない。冒頭の立体的演出が随所にある戦場のシーン、バーのリングの上から雨漏りが起きて、ずぶ濡れのなかで格闘を続けるくだり、そして暗い工場の中で、足場やクレーンを活かした立体的で躍動感のある描写。アクション俳優が監督をしていればこそ、アクションを個性的に、魅力的に表現しようという意気込みは確かに随所に窺える。或いは、そういうこだわりを脚本に落とし込もうとした結果、脈絡に欠き共感を得にくい展開になってしまったのかも。
同様の構図は後年のドニー・イェン出演作にも見かけますが、そこに至る道筋のごく早い段階にあった作品、という印象。これ以降、ジェット・リーは自身で監督した作品はひとつもないあたり、自ら早々に見切りをつけたのかな、と思いますが、続けていれば或いはアジア圏のアクション映画はもっと早く進化していたのかも、とちょっと惜しまれる。
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