TOHOシネマズ錦糸町オリナス、スクリーン7入口脇に掲示された『search/#サーチ2』チラシ。
原題:“Missing” / 監督:ニック・ジョンソン、ウィル・メリック / 脚本:ニック・ジョンソン、ウィル・メリック、セヴ・オハニアン / 原案:アニーシュ・チャガンティ、セヴ・オハニアン / 製作:アニーシュ・チャガンティ、セヴ・オハニオン、ナタリー・カサビアン / 製作総指揮:ティムール・ベクマンベトフ、ジョー・エンリケス、アダム・シドマン / 共同製作:コンギュー・E / 撮影監督:スティーヴン・ホールラン / プロダクション・デザイナー:ケリー・ファロン / 編集:オースティン・キーリング、アリエル・ザコウスキー / 衣装:リンジー・モナハン / キャスティング:リンジー・ワイズミューラー / 音楽:ジュリアン・シャール / 出演:ストーム・リード、ニア・ロング、ヨアキム・デ・アルメイダ、エイミー・ランデッカー、ダニエル・ヘニー、ミーガン・スリ、ケン・レオン、ティム・グリフィン / ステージ6フィルムズ/サーチ・パーティ製作 / 配給:Sony Pictures Entertainment
2023年アメリカ作品 / 上映時間:1時間51分 / 日本語字幕:中沢志乃 / PG12
2023年4月14日日本公開
公式サイト : https://www.search-movie.jp/
Amazon Prime Video : https://amzn.to/3VdzlD7
TOHOシネマズ錦糸町 オリナスにて初見(2023/4/18)
[粗筋]
ジューン(ストーム・リード)の母グレース(ニア・ロング)が、マッチングアプリで出会った恋人のケヴィン(ケン・レオン)とともにコロンビアに旅行に出かけることになった。母ひとり娘ひとりの家庭だが、それゆえ万事に口を挟むグレースを鬱陶しく感じていたジューンは、ここぞとばかりに羽目を外す。母が帰る前日は大勢の友人を自宅に招き、盛大なパーティを催した。
グレースから、空港に迎えに来て、と言われていたにも拘わらず、寝過ごしたジューンは大慌てで空港へと駆けつける。到着予定時間には間に合ったが、しかし何時間待っても、母と恋人は現れなかった。
すぐさま警察に通報するが、担当捜査官のパーク(ダニエル・ヘニー)から旅行中の滞在先、訪問先を問われたジューンは困惑する。コロンビアに行くとは言われていたが、どこを観光するのか、はおろか、滞在するホテルの名前すら知らなかった。
ジューンは母のアカウントにログインし、行動履歴から辛うじて滞在したホテルを突き止めるものの、従業員の口からこれといった情報は得られない。頼りの監視カメラ映像は48時間ごとに上書きされてしまうが、現地での捜査権を持たないFBIは現地の大使館に掛け合わねばならないが、このとき既に時間は夜、翌朝まで待たなければならない。
そこでジューンは便利屋を頼むことにした。パーティで散らかした部屋の清掃を依頼した便利屋派遣サイトがあり、同じサーヴィスをコロンビアでも実施していることを探り出したのである。学生ゆえ自由になる金銭は限られていたため、最安値のメンバーを検索、発見したハヴィ(ヨアキム・デ・アルメイダ)にホテルから監視カメラ映像を監視して欲しい、と依頼する。残念ながらこの時点で既に監視カメラ映像は上書きされていたが、幸いにもホテルの従業員にハヴィの知人が勤めており、ケヴィンらしき人物に質問された話を聞き出す。
だが、この事実を皮切りに、事態は思わぬ方向へ進み始める――
[感想]
邦題こそ『サーチ2』だが、原題は“Missing”とまるで異なる。ただし、全篇がPC画面のみで展開する語り口は踏襲しているし、何より、『search/サーチ(2018)』で描かれた事件が、テレビのノンフィクション番組で採り上げられているのが描かれており、物語としては完全に地続きになっている。『サーチ』を鑑賞する必要はない独立した作品ではあるけれど、続篇として捉えるのは決して間違いではない。
恐らくは作り手も、「『サーチ』の方法論を踏まえながら、より洗練させ、深化させる」というスタンスだったのだろう。同じ表現方法を用い、デジタルデバイスやネットワークのサービスを駆使して謎を追う、というスタイルはまったく同じでも、ひとつひとつの表現、手段の活用ぶりがレベルアップしている。
前作は父親が娘を探す、という趣向だったが、今回はハイティーンの娘が、旅に行ったまま戻らない母親を探す物語だ。ポイントは、視点人物がいわゆる“デジタル…ネイティヴ世代”である、という点である。それゆえに、主人公ジューンの幼少時代から映像データがあり、そしてその成長の過程と、反抗期を迎え唯一の家族である母親とは異なる個性を確立していくさままでもが、様々なアプリケーションとデータの形で画面上に層を成していく光景が実に現代的であり、圧巻だ。すべてをPCの画面上に収める、この表現手法と縛りだからこそ可能なドラマの描き方である。
そしてその上で、サスペンスとしての質の高さもまた踏襲している。どこの家庭にもありがちな娘の母に対する反発、そのせいで家庭に生まれる緊張感。母グレースが恋人との旅行で留守にしているさなか、娘のジューンはここぞとばかりに羽目を外し、その痕跡を隠しつつ約束通りで迎えに空港まで向かうが、母はなぜか帰らない。ルールに縛られ機敏に動けない警察に業を煮やしたジューンがデジタルデバイス、ネットワークを駆使して手懸かりを探すと、次第に思いがけない事実が浮上してくる。どんどん事態は複雑化し、終盤まで予断を許さない手に汗握る展開が繰り広げられる。
本篇の優れているのは、手懸かりを捜し求める過程で利用するサービスやシステムが、解り易く描かれている点だ。実に効果的に用いているので詳述は控えるが、そのまんまでは解りづらい利用方法、その仕組みを活かした状況の展開が、把握しやすいよう予め劇中で伏線として鏤められているのである。本篇を鑑賞した時点でそうした仕組みやサービスを知らない人はもちろん、時間が経ってサービスが終了したあとで本篇を鑑賞したとしても、こうした趣向がもたらす変化、意外性は理解できるはずだ。
しかも、非常に込み入った作りでありながら、終盤のドライヴ感は強烈だ。次々に判明する新事実と衝撃の展開、そしてこの趣向からすぐには想像出来ないレベルの圧倒的緊張感。そこまでに描かれたドラマを巧みに膨らまし活用しながら、結末があまりにも鮮やかだ。その爽快感と、エピローグの粋さは、前作にも劣らないどころか、捉えようによってはレベルアップしている、とさえ言える。
前作で押し広げた映像表現の可能性とその面白さを、見事に拡張させた、素晴らしい続篇である。前作をまったく観なくとも充分すぎるほど楽しめるが、より満喫するために、本篇の跡でも構わないので前作も鑑賞して欲しい――まあ、前作同様、情報量が多すぎて、ご家庭のテレビ画面では内容を追いきれない、という欠点も露骨にそのままなのだが、既に配信が始まっている現在なら、設定で吹替版も選択出来るので、それなりに観やすくなるはずである。
関連作品:
『search/サーチ(2018)』
『RUN/ラン』
『透明人間(2020)』/『シャッフル』/『ワイルド・スピード MEGA MAX』/『ドクター・ストレンジ』/『ラストスタンド』/『オールド』/『アメリカン・スナイパー』
『アンフレンデッド』/『ゴーン・ガール』/『アメリカン・マーダー:一家殺害事件の実録』
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