『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』


原題:“What We Do In The Shadows” / 監督&脚本:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ / 製作:エマニュエル・マイケル、タイカ・ワイティティ、チェルシー・ウィンスタンリー / 撮影監督:リチャード・ブルック、D・J・スティップセン / プロダクション・デザイナー:ラ・ヴィンセント / 編集:トム・イーグルス、ヤナ・ゴルスカヤ、ジョナサン・ウッドフォード=ロビンソン / 衣装:アマンダ・ニール / キャスティング:ティナ・クリアリー、ローレン・テイラー / 音楽:プラン9 / 出演:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ、ジョナサン・ブロー、コリ・ゴンザレス=マクエル、スチュー・ラザフォード、ベン・フランシャム、ジャッキー・ヴァン・ビーク、エレナ・ステイコ、ジェイソン・ホイテ、カレン・オリアリー、マイク・ミノーグ、チェルシー・プレストン=クレイフォード / 製作 / 配給&映像ソフト発売元:松竹
2014年ニュージーランド作品 / 上映時間:1時間25分 / 日本語字幕:? / PG12
2015年1月24日日本公開
2015年7月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : https://www.netflix.com/watch/70300668
NETFLIXにて初見(2020/04/16)


[粗筋]
 現代を生きるヴァンパイアには、様々な苦労がある。本篇は、そんな彼らの日常を追ったドキュメンタリーである。
 379歳になるヴィアゴ(タイカ・ワイティティ)は、862歳のヴラディスワフ=ヴラド(ジェマイン・クレメント)、183歳のディーコン(ジョナサン・ブロー)、そして8000際のピーター(ベン・フランシャム)と、ニュージーランドの首都ウェリントンで共同生活を送っている。
 それぞれの吸血鬼生活を円滑にするための工夫だったが、生まれた時代も価値観も異なるので、お互いに不満が生じがちだった。ヴィアゴは仲間たちが犠牲者を食い散らかして館を汚すのがどうしても許せず、ミーティングを行ってルールの徹底を図ろうとするが、なかなか意思の疎通が取れない。
 それでも彼らは長すぎる人生を、なるべく共に愉しむべく努力していた。館で下手な楽器演奏会を催したり、時には揃ってバーに繰り出す。招かれないと室内に入れない彼らは店に通して貰うだけでもひと苦労だが、街には仲間たちが少なからず徘徊しており、同胞の経営する店もある。
 本格的な食事にありつきたいときは“使い魔”を動員して得物をおびき寄せる。ヴィアゴが“使い魔”として使役しているのは人間の主婦ジャッキー(ジャッキー・ヴァン・ビーク)だった。いずれは永遠の命を与えてもらう、という“契約”のために、ジャッキーは知り合いのなかから特に関心がなく、かつヴァンパイア好みのヴァージンっぽい人物を探して、ヴィアゴたちの館へと招く役割を担っていた。
 だが今日日、見当でヴァージンを探し出すのは困難を窮める。ジャッキーがようやく調達した元カレのニック(コリ・ゴンザレス=マクエル)も、処女そうな外見のジョセフィン(チェルシー・プレストン=クレイフォード)もともにヴァージンを否定、饗宴は大いに盛り下がってしまう。とりあえず食事に臨んだが、館から逃げ出したニックを、珍しく外出していたピーターが餌食にしたことで、想定していなかった事態に発展する――


『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』本篇映像より引用。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』本篇映像より引用。


[感想]
 怪物や超常現象など、現実にはあり得ない(あったとしても、そうそうお目にかかれない)シチュエーションを題材としたフェイク・ドキュメンタリーが好きだ。その場に入ったカメラがどんなものを目撃し、それを疑似体験できるようなヴィジュアルを観ると、その技術力や完成に至るまでの創意工夫に痺れてしまう。作り手の技倆が乏しければただのアイディア1本の勝負になってしまうが、腕がある作り手が携われば、設定に説得力をもたらすための工夫故に、その隅々にまで意識の行き渡った作品になる、というのもこの趣向の面白さだ。
 そういう意味で本篇はまさに、理想的な内容と出来映えである。
 粗筋をご覧いただければ一目瞭然、その題材はヴァンパイア”だ。しかも、近年の流行に従って設定をアップデートすることなく、クラシックな“ヴァンパイア”の設定を守ったうえで、彼らのありそうな“日常”を巧みに描きだしている。
 ヴァンパイア同士でも誕生した時代によって価値観に隔たりがある。劇中、そこまで明確に言及はしないが、それでも一緒に暮らすことのメリットはあるのだろう、ルールを設け、なんとか共同生活を維持しようと試みる。だが、如何ともし難く噛み合わない部分もあり、能力的には生態系の頂点に立てるような者たちなのに、妥協し合っているのが面白い。
 一方で、いわゆる吸血鬼の定番と言える嗜好や習慣を守るにも、それぞれ困難や失敗がある、という描写がまた笑いを誘う。主に作品の語り手に近い位置づけで振る舞うヴィアゴが披露するヴァンパイアとしての悩み、欠点は確かに、彼らがただ悪役、恐怖の対象として描かれる作品ではほぼほぼお目にかからないが、現実に存在しているならあっても不思議のない内容だ。そこに、人外の者ならではの“人間味”が滲み出しているのがより滑稽さを際立たせる。描写そのものはグロテスクだし、ホラーとしての様式美も守っているのだが、それがすべてコメディに昇華されていて、そのセンスには脱帽するしかない。
 設定はほぼほぼ定番で固めているのに、展開に驚きと意外性で彩られているのも見事だ。本篇のヴァンパイアたちは眷属を増やすことにやけに慎重なのだが、途中で加わるメンバーの振る舞いを見ていると、それが如何に重要か、というのも解る。そしてこの軽率極まる新メンバーの、当たり前にやりかねない行動が、どんどん事態を予測不能に転がしていくのだから、本当に面白い――当事者達にとっては甚だ迷惑な話だろうが、その混乱、動揺ぶりがまた笑えるのである。
 本篇は、もはや手垢のつきまくった“ヴァンパイア”というモチーフに、新たな光を当てることで、魅力を引き出している。苦手な光を浴びせられて当人達は火傷どころの騒ぎではないが、そのぶん新たな命を吹きこまれているのだから、ヴァンパイアたちとて本望だろう。
 ヴァンパイアはじめ夜の住人たちの新しい見せ方を提示した結果、テレビシリーズというかたちで続篇も製作されているらしい。しかし、本篇だけでも充分にいいオチがついているので、この作品1本でもその面白さは満喫出来る。
 本篇によって注目された共同監督兼ヴィアゴ役のタイカ・ワイティティはマーヴェル・シネマティック・ユニヴァースの1篇『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督に抜擢された。その後に撮った『ジョジョ・ラビット』で、ナチスを批判的な見方を損なうことなく、コメディタッチで切り取る荒技を成し遂げ賞レースでも存在感を示したが、そこに至る作風は本篇の段階で既に確立していたことが窺える。『ジョジョ・ラビット』が響いたひとは、本篇も是非ともチェックするべきだろう――但し、あんな感動は待ってないので、その点だけは留意願いたい。


関連作品:
ジョジョ・ラビット
メン・イン・ブラック3』/『30デイズ・ナイト
ダリオ・アルジェントのドラキュラ』/『フロム・ダスク・ティル・ドーン』/『血の伯爵夫人』/『トワイライト~初恋~』/『ぼくのエリ 200歳の少女』/『モールス』/『デイブレイカー』/『ブラッディ・パーティ』/『アンダーワールド ブラッド・ウォーズ』/『ダーク・シャドウ』/『リンカーン/秘密の書

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