『スペンサー・コンフィデンシャル』

『スペンサー・コンフィデンシャル』本篇映像より引用。
『スペンサー・コンフィデンシャル』本篇映像より引用。

原題:“Spenser Confdential” / キャラクター創造:ロバート・B・パーカー / 原作:エース・アトキンス“Wonderland” / 監督:ピーター・バーグ / 脚本:ショーン・オキーフ、ブライアン・ヘルゲランド / 製作:トビー・アッシャー、ピーター・バーグ、スティーブン・レヴィンソン、ニール・H・モリッツ、マーク・ウォールバーグ / 製作総指揮:ビル・バナーマン、エリック・ヘフマン、ジョン・ローガン・ピアーソン、ステファン・ソナーフェルド / 撮影監督:トビアス・A・シュライスラー / プロダクション・デザイナー:ニール・スピサック / 編集:マイケル・L・セール / 衣装:ヴァージニア・ジョンソン / キャスティング:シェイラ・ジャッフェ、アンジェラ・ペリ / 音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー / 出演:マーク・ウォールバーグ、ウィンストン・デューク、アラン・アーキン、イライザ・シュレシンガー、オースティン・リチャード・ポスト、マーク・マロン、ボキーム・ウッドバイン、マイケル・ガストン、コリーン・キャンプ、ホープ・オライド・ウィルソン、ブランドン・スケールズ、ジェームズ・デュモン / オリジナル・フィルム/クローゼスト・トゥ・ザ・ホール・レヴァレッジ・エンタテインメント/フィルム44製作 / 配給:NETFLIX
2020年アメリカ作品 / 上映時間:1時間50分 / 日本語字幕:萩原利恵 / R指定
2020年3月6日世界同時配信
公式サイト : https://www.netflix.com/title/81005492
NETFLIXにて初見(2020/04/09)


[粗筋]
 ボストン市警の警官だったスペンサー(マーク・ウォールバーグ)は指揮官にあたるジョン・ボイラン警部(マイケル・ガストン)への暴行で服役、5年間の刑期を経て出所した。
 スペンサーは自身に格闘技を叩きこんだ師匠であるヘンリー(アラン・アーキン)のもとに身を寄せた。トレーラーの免許を取得してアリゾナに転居し、愛犬のパールと共に穏やかな生活を送る……つもりだったが、直後に事件は起きた。
 彼の刑務所送りから更に出世したボイランが激しい暴行の果てに殺害された。当然のようにスペンサーも容疑者として事情聴取を受けたが、ほどなく警察では、自宅前の路上に駐めた車の中で屍体となって発見された警官テレンス・グレアム(ブランドン・スケールズ)の犯行と断定した。
 アリバイも存在したため容疑は晴れた格好だったが、自殺したとされるテレンスの人柄を知っていたスペンサーは、警察の結論に疑問を抱く。テレンスの妻レティシア(ホープ・オライド・ウィルソン)が涙ながらに無実を訴える様に、スペンサーは心を動かされた。
 いちおうはトレーラーの免許を取るための勉強も始めたが、ポイランの事件に取り憑かれたスペンサーは自ら捜査に乗り出す。ボイランへの暴行で元警官からの心証が極めて悪いため、内部の事情を探るのは難しかったが、テレンスの事件当日の行動を洗い出したスペンサーは、いよいよ彼の無実を確信する。そして、どうやら警察がまともに捜査をしていない、という事実にも辿り着く。
 ボイランは、そしてテレンスはなぜ殺されたのか。スペンサーはヘンリーの元で同居する格闘家の卵ホーク(ウィンストン・デューク)を相棒に、テレンスの無実を証明するべく行動に出た――


[感想]
 私立探偵スペンサーはロバート・B・パーカーによって創造されたキャラクターだ。パーカーの病没まで彼自身の手によって紡がれてきたスペンサーの物語はその後、エース・アトキンスが書き継いでいる。本篇はそうして復活したあと、エース・アトキンスが執筆した“Wonderland”という作品に基づいているらしい。
 生憎、パーカー死後のスペンサー・シリーズは日本で翻訳されておらず、情報も少ないため、どの程度原作に準拠しているのかは解らない。だが個人的に、ハードボイルドと呼ばれるジャンルに抱いているイメージと、本篇はいくぶん食い違っていた、と言わざるを得ない。
 少なくとも主人公がハードボイルドの似合うタフガイであることは確かだ。元警官が入れられることのない一般の刑務所で、他の囚人達に狙われながらもしぶとく耐え忍び、現役警官達に憎まれていることも承知のうえで警官殺しの調査に自ら臨むそのスタンスは逞しい。
 が、その目的自体は崇高とも言えるが、行動はいちいち間が抜けている。警官達が集まる酒場で情報収集に乗り出すものの返り討ちに遭ってしまうし、事件に関係すると見られる車を追跡しようとして、途中で犬に襲われたりする。御都合主義的な格好良さと一線を画した描写はリアルとも言えるが、どちらかと言えばコメディの匂いの方が強い。格闘技の師匠であるヘンリーや遺恨のある恋人シシー(イライザ・シュレシンガー)、途中からスペンサーの弟子兼相棒のような立ち位置になるホークらとのやり取りにしても大半がジョークで彩られているので、渋みや重厚なドラマなどを期待していると拍子抜けしてしまう。
 良質なハードボイルドは良質なミステリであることも多いが、そういう意味でも本篇はいささか微妙な仕上がりだ。スペンサーと因縁のある上司が殺害され、知己の警官が犯行のうえ自殺した、という解釈に疑問を抱いて捜査に乗り出すが、この発端から想像するとおりの流れなので、意外性に乏しい。そのうえ終盤の展開がかなり強引かつ乱暴なので、本篇にミステリとしての面白さを求めてしまうとますます失望は強くなるはずだ。
 ただ、そのあたりを許容できるなら、エンタテインメントとしてはうまく組み立てられている。血気盛んで正義感に溢れているが妙にドジで憎めない主人公が、随所で障害にぶつかりながらも逞しく真相へと突き進んでいく。もはや絶体絶命、としか思えないクライマックスに用いる手段は劇中でも飛び抜けて乱暴な趣向だが、伏線も設けられていて爽快感がある。あのカタルシスは、劇場公開時は不評だったが、映像ソフトや放送を経てマニアックな人気を高めた『バトルシップ』にも通じるものかある――たぶんこれは監督の趣味なのだろう。これだけ派手なことをしておいたわりに決着の仕方がまた別の意味で力任せなのも評価が分かれそうだが、ここに至る伏線は設けられているので、決して悪い締め括りではない。
 いわゆる推理小説の流派のひとつでもあるハードボイルド、というよりは、スペンサーという、抜けたところがあるけれどひたむきな熱血漢の魅力そのものが芯になった、キャラクター重視の作品と言える。エピローグの描写からは、評価次第ではこのスペンサーの物語がまだ続きそうな気配があるが、個人的には、もしそうならまた鑑賞してみたい、と思うくらいの魅力は確かにある、と感じた。でも次があるならもう少し謎解きにも力を入れて欲しいが。


関連作品:
ローン・サバイバー』/『キングダム―見えざる敵―』/『ハンコック』/『バトルシップ』/『ロビン・フッド(2010)』/『アパルーサの決闘
ゲティ家の身代金』/『アルゴ』/『ブッシュ』/『スパイダーマン:スパイダーバース』/『ジョーカー』/『リディック:ギャラクシー・バトル』/『アメリカン・ハッスル』/『ジュラシック・ワールド
ロング・グッドバイ』/『チャイナタウン』/『トレーニング・デイ』/『ゴーン・ベイビー・ゴーン』/『フェイク シティ ある男のルール

コメント

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