――だいぶ前から仄めかしていたお出かけは、イベントに合わせた松江への旅行です。
今回は初めて、JALの宿泊パックで航空券も宿もまとめて確保しました。宿の最安値が公式サイトなのは基本だとしても、コロナ禍以降の宿泊費高騰と予約の厳しさは如何ともし難い。昨年11月末、日程が確認出来てすぐに宿と移動手段の確保を図ったのですが、時間帯、条件ごとの価格差にクラクラしてしまった。で、試しに宿泊パックでチェックしてみたところ、合計として考えれば悪くない料金で発見できたので、即押さえてしまいました。
ただ、焦った状態で安く、お目当てのイベントを訪れるのに適当な時間を優先して選んだ結果――往路を朝いちばんの便にしてしまった。
軽い気持ちで選んでしまいましたが、これがなかなか過酷だった。なにせ、あり得ないほど早起きせねばなりません。普段の土曜日、私は深夜3時半まで起きてラジオを聴いてから就寝するのですが、この日に限っては、理想通りのスケジュールを選択すると、そのまんま寝ない方がマシ、になってしまう。しかし、眠らずに出かけてしまうと、そこからお目当てのイベントまでず~っと眠ることが出来ません。万一、イベント中に眠ったらどうする。あそこでいびきをかいたら最悪だ。
だから、前日はあんな特殊なスケジュールで動いていたわけです。平素は土曜を、透析を休む日にしていますが、透析は実施。その代わり、可能な限り時間を短縮し、済ませたらその時点で詰められる荷物を詰め、さっさと就寝。そして翌朝、無事に早起きできたら、ギリギリまで使用していた物――充電用のUSBケーブルや、なるべくこれは使いたい、という電動歯ブラシ、剃刀などをスーツケースなどに収める。そんな手順を頭の中で反復しつつ、無事に間に合うことを願いながら就寝しました。
これ以上遅くなると朝食を摂る時間がない、というギリギリで、何とか起床。こういうとき、目覚ましに使うのは、いつも使っている曲ではない方がいいらしい。二の矢として設定してあった『bling-bang-bang-born』に救われました。
取り急ぎ、残っている荷物をまとめつつ着替え、顔だけ洗う。この頃に起き出してきた母に見送られつつ出発……荷物を確認しきれなかったことをやや悔やみつつ。電車に乗り、ここを書きながら、「アレ忘れてねえだろな……?」と戦々恐々としてます。忘れてはならないものは先に詰めてるので、却って不安になるのだ。
6時10分頃、羽田空港到着。ここまでは、理想的ではないにせよ、まあこなせれば無難かな、という時間割の範囲内でした……が、空港の状況が予想外でした。
保安検査場が大行列でなかなか進まない。
やっと搭乗ロビーに入れたと思ったら、トイレが空いてない。
このふたつの想定外で、バタバタと行動する羽目になりました。前の旅行で気になっていた、おにぎりの専門店を利用するどころではない。JALプラザでせめてもの腹ごしらえに、紅鮭のおにぎり1個とペットボトル1本買うのが精一杯でした。飛行機に乗ってから離陸まで、こんなにあっという間に感じたのは初めてだよ。
飛んでからも不安は続く。案の定、目的地の出雲空港は雪模様で、着陸できるか不明、という有様。取りあえず簡単に朝食は摂れたので気持ちは落ち着いた、しかしまだ不安は拭えない。
ちなみに座席は往復ともに、予約時点でクラスJにしてある――だって、五郎さんが宣伝してたんだもん。それを抜きにしても、座席が前方だったり、足許が広かったり、と快適なのは既に体感しているから、予めアップグレードしておくのに抵抗はなかった。こんなバタバタしてても、足許に余裕があるだけでちょっとゆとりが生まれます。馬鹿にならない。
離陸は定時でしたが、出雲空港のほうが混雑で着陸許可が出ないとかで、着陸したのは予定から15分遅れの8時45分。空港連絡バスのチケットを買うのにも手間取り、故にバスそのものも予定よりだいぶ遅れて出発する。余裕があれば久々に出雲大社にお詣りするつもりでいましたが、この日はいったん諦め、宿のある松江駅方面に乗車しました……乗り込んだところでこの行を書き足してますが、ほんとになかなか出ねえ。バスが出たのは9時20分でした。
道中は雪景色だけど陽は射してる……と思ってたら次第に粉雪が舞い始め、松江駅に着く頃には雪殴りの横。変な言い方だけど、本当にそんな感じでした。
ただ、目的地付近で次第に降りは治まり、荷物を預けるために宿に辿り着いたときには小康状態になっていた。そのあとも、風花のようなものが散ることはあっても、空には雲の切れ間が生じて、日が射す時間も多く、人が歩くあたりは次第に雪が溶けていき、だんだん移動しやすくなっていった。
正式なチェックインは15時以降なので、ここからはひたすら時間潰しです。ひとまず、お昼に考えているラーメン屋を訪れるまでの時間を、屋根のあるところで過ごすことにする。
まず訪ねたのは、松江歴史館。松江の歴史的資料を展示しているところ。以前は、松江怪談談義の会場にもなっていたので、私にとってもお馴染みですが、時間を潰すためとはいえ、ちゃんと本来の企画で訪ねるのは久しぶりです。次の目的地まで移動する時間などを考慮すると20分くらいしかないので、企画展のほうだけ鑑賞してきました。
今回のテーマは、京極氏のときから松江藩に仕え、代々家老を務めてきた《大橋茂右衛門》の資料。伝来の甲冑や刀剣を除くと、ほぼ大半が書状。幕府より仰せつかった普請についてのやり取りや、藩主から病状を気遣う書状など、この時代の主従で交わすやり取りが垣間見える。こういう、ニッチな題材は注目を集めづらい気はしますが、これはこれで充分興味深いし意義がある。
麪家ひばりのあごだし白湯らーめん、背脂入りでかつ半熟玉子トッピング。
一通り展示を巡ったあと、橋を渡って、少し進んだ路地の奥にあるラーメン店、麪家ひばりへ……まだ開店には少し早かったけど、15分ほどなので店の前で待たせて貰う。結果的に、この日の開店待ち第1号だった模様……この不安定な陽気のなか、突撃してくる客はそこまで多くないのでしょう。間もなく数人のグループが並び、開店すると次第に席が埋まり、食べ終わる頃には満席になってましたが、秋口の昼に訪ねたときより混雑は緩やか。
注文したのは、あごだし白湯らーめんに背脂を追加したこってり味、そしてトッピングに半熟玉子……他にもメニューはあるんですが、なにせ訪れるのは年に一回なので、結局おんなじものを注文してしまってます。でも美味しいんだもの。昨年の秋、タイミングを誤って食べられなかった分も堪能いたしました。そして、帰宅後に母と食べるためのお土産もちゃんと買う。
お腹が空いていたので、開店直前に突撃してしまいましたが、そのせいで、食べ終わってもまだまだチェックインまで時間がある。ひとまず、小泉八雲記念館に赴くことに。こちらは何だかんだで、松江に来るたびほぼ毎回訪れてます……施設が綺麗で、トイレに入るのに困ったとき重宝しているせいもある。
こちらは久々に常設展示の方をじっくり鑑賞。理由はちゃんとある。佐野史郎による、山陰を舞台にした怪談朗読を堪能できるブースで、個人的に好きな《飴を買う女》の朗読をじっくりと浸ったあと、離脱。実はここで聴ける朗読は、まとめてCDに収録して販売しているので、これもとうとう購入してしまいました。家に帰ってもういっかい堪能する。
時間はまだまだ余っている。そろそろ体力は限界だけど、頑張って天守のそばまで上がっていって、撮影だけしてきました。雪が積もって白くなった姿を拝みたかったのですが、陽射しがしばらく注いでいたせいで、屋根の雪はほぼ溶けていました。
大手門前まで下っていっても、まだ1時間半ほど残っている。困り果てた挙句――堀川遊覧船に乗ってきました。松江城のお堀を、大手門前の船着き場を起点として、反時計回りでゆっくりと一周し、船頭の解説とともに独特の情景を鑑賞する観光船です。乗船券は一日有効なので、朝から乗れば、途中の船着き場で下船して、また利用することも出来るため、周回バスに近い使い方も出来る。
この遊覧船、一周がほぼ1時間。水上の吹きっさらしで、そのままなら凍える環境ですが、冬場は何と、こたつを搭載している。やはり上半身は冷えましたが、足許がぬくぬくというだけで和みます。まして、松江に着いて以降、ラーメン屋以外ではほぼほぼ歩き通しだった身には染みるありがたさ。これまで利用したことのある秋口とはまた違う情景や、生息する鳥類の区別が完璧すぎる船頭の解説も楽しいですが、これを暖まりながら楽しめるのが何より嬉しい。
一回りしたところで、チェックインまではまだ40分ほど残っている。しかし、ここでもう、ギブアップすることにしました。ひとまず宿に赴き、早めにチェックインが可能か、出来なければ、近くで座って休めるところを教えて貰おう。
幸い、宿の方が部屋をすぐ手配してくださったので、予定よりちょっと早くチェックイン。買い物の記録をつけたり、この記事に使う写真の処理をしたりしながら、本命のお出かけまでの時間を座って潰すのでした。
このあと、メインイベントについては――もう疲れ切ったので、24日にまとめてアップします。とりあえず今日の記事は、うろついているあいだに遭遇した、もうひとつの雨粒利伝像で締めくくり。
コメント