『まんが日本昔ばなし』第十一回

 一本目は『さだ六とシロ』。強い絆で結ばれた猟師のさだ六と猟犬のシロ。その技倆で将軍から領地を越えての狩りを許されたさだ六であったが、吹雪に追われて難渋していたところ、初めて目にするような巨大なアオイノシシを発見し、領地を越えて追い詰める……線はシンプルですが、躍動感があってアニメーションとして実に良質。緩急のバランスも巧く、ちかごろのアニメを観るよりずっと面白かった。救いもなく教訓もない(ここから狩りをすることが悪行だ、という結論を出すのは安易です)話ですが、それ故に漂う儚くも美しい余韻が秀逸。もともと精選した作品を放送しているようでしたが、これは特に良かった。

 二本目の『地獄のあばれもの』は、飢饉によって多くの死者が出た年、治すべき医者も加持祈祷を行う山伏もついでに鍛冶屋も病に倒れてしまった。自分たちは天国行きだろうと確信していた人々だが、閻魔帳に記されていた悪行のために地獄送りにされてしまう。ほとほと困り果てつつも、それぞれの技術を駆使して苦境を乗り切ってしまうのだった。……一本目とはまるで正反対の脳天気な話。死んでしまったという切迫感など微塵もなく、奇想天外な方法で困難を乗り切ってしまう三人が格好良く、閻魔や鬼たちが間抜けに見えます。知恵や度胸があれば苦境も乗りきれる――と無理矢理教訓を摘み取ることも出来るかも知れませんが、大人しく閻魔大王の無様な姿を楽しんでおくのが吉でしょう。これを一本目のあとに置いたあたりが実に憎い。

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