『まんが日本昔ばなし』第十九回

  • 『かしき長者』

 ぼんやりした性分で成長してもなかなか船に乗せてもらえない佐助は、懸命に頼み込んだ結果、かしき(調理係)としてようやく船に乗せてもらえることになる。仕事柄、誰よりも夜遅くまで働く佐助は、残り物を魚に分け与えてやり、いつしか魚も佐助の乗る船の周りに集まるようになっていた。

 善人が報われるタイプの話ですが、幸福の訪れがあまりにも異色です。しかし語り継いだ人々の本心は、「なんでもっと沢山掬ってこなかった!」という気もする。

 人物はオーソドックスな漫画調ですが、背景の描き込みが凄まじい一話でもありました。ほとんど絵画です。

  • 『大六天さま』

 異常なほどの綺麗好きで知られるおばあさん、自分の家だけでは飽きたらず、村人たちの家にまでお節介をかけるため、たいそう迷惑がられていた。ある日、大六天さまの石碑の前で遊んでいる子供達の散らかした玩具を採りあげたおばあさんは、家に持ち帰り燃やそうとするが……

 これは意外と現代的な話という気がします。こんなに極端なばーさんもああいう変わった神様も特殊な例でしょうが、要は他人の価値観を否定することを戒めた話。こういう論旨の昔話があるというのがちょっとした驚きでした。しかし、汚いからと言って箪笥を捨てるのはさすがに止めてもいいと思うのですが。

 あちこちはみ出した雑な線が、滑稽さと共にお話の主題によく馴染んでます。しかしこの線を動かそうとすること自体が既に驚異という気もする。

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