ダーティペアFLASH2 天使の微笑

ダーティペアFLASH2 天使の微笑 ダーティペアFLASH2 天使の微笑(ほほえみ)

高千穂遙

判型:文庫判

レーベル:ハヤカワ文庫JA

版元:早川書房

発行:1999年7月15日

isbn:4150306192

本体価格:580円

商品ページ:[bk1amazon]

 大ヒットした前シリーズのエッセンスのみを抽出し、殆どの設定を一新して仕切り直した「ダーティペアFLASH」シリーズの第2作。親本は1997年1月に刊行されており、第3巻の刊行に合わせて第1巻と続けて文庫化された。

 惑星アガルタの潰れたテーマパークを改装して創設された「薔薇十字学院」。その奥に身を潜める異界の妖魔。その存在を察知し撃退するために「WWWA」から派遣されたケイとユリだったが、莫大な潜在能力のみ見込まれて一切訓練を受けていない二人に何が出来るわけでもなく、代わりに同級生の円行とファン・スーの二人が日夜雑魚妖魔と戦い続ける日々が続いていた。そんな彼等も皆一様に一応学生であり、修学旅行なる定例行事にもちゃんと参加する。大型外洋宇宙船<ゲヘナ>に乗って、いざ惑星シャングリラへと出航する一同であったが、やはりというか案の定というか、優雅なディナーの席上、二人の船員が異形に変貌した――!

 顔見せ的色合いの強かった前作に較べると、舞台が限定されているため展開に一貫性がある。加えて、本体は骨格と推進機関のみであり、必要に応じたモジュールの接続により様々な形態を取りうる外洋宇宙船という特殊な舞台のお陰で、行程に謀略サスペンスの味わいが付加されていて、完成度は高まっている。また、前作では経験不足もあってどうも円行やファン・スーといった脇を固める能力者に食われていた主役二人だったが、状況の必然性から活躍の場が増しているのも嬉しい。謎めいた登場キャラの追加もあってシリーズとしては混迷の兆しを見せているが、いやいや、だからこそ楽しいのである。

 ただ、作者が面倒くさがったのか「薔薇十字学院」にケイとユリが送り込まれた経緯、アフリマンなどの定義について説明がかなり端折られているので、そうした省略を乗り越える自信や技量のない方は前作「ダーティペアFLASH1 天使の憂鬱」が必読である。少なくともそれなくしてはユリの性格が納得できないんでないかと思うんだが。

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