本当にあった呪いの話

本当にあった呪いの話 『本当にあった呪いの話』

三木孝祐

判型:文庫判

レーベル:ハルキ・ホラー文庫

版元:角川春樹事務所

発行:2006年7月18日

isbn:4758432473

本体価格:660円

商品ページ:[bk1amazon]

“呪い”は決して過去のものではない。近年になっても各地で発生している、“呪い”にまつわる事件を採集、陰陽道についての解説と合わせてまとめた異色の実録怪談集。

 現代の実録怪談の手本たる『新耳袋』では意図的に“呪い”にまつわるエピソードを極力排除する方針でまとめられている。その辺の事情については著者が各所で語っているが、本書を読むとその理由の一端が窺えるように感じる。……率直に言って、あまり怖くも、面白くもない。

 何せ成り行きがほとんど一緒なのだ。事件が起きる→関係者が対策に苦慮する→僧侶や霊能者など“呪い”についての知識のある人間が祓って、ひとまず一件落着、というアウトラインはまるで一致している。細部には隔たりがあっても、特に印象的な部分のないエピソードばかりなので、読んだ端から記憶が薄れてしまう。当事者にとっては尋常ならざる事態であっても、それが感じられる書き方をしていないのも弱い。

 また、どの程度実話なのか疑わしい部分が多いことも、興趣を削ぐ一因となっている。毎回“呪い”を解く方法を持つ人物が登場するが、その方法論に疑問の余地が多く、果たして本当にその道の専門家が発した言葉なのか、採用していた折伏法であるのか信用しきれないのだ。ある話のなかで僧侶が“地縛霊”という単語を用いているが、この定義は比較的最近作られたものであるという説があり、本書に収録されている出来事の発生時期に専門家が口にしていたとは少々考えにくい。単純に体験者の談話を採集したにしては、“呪い”の解き方がやたらと詳しく記されている点から、このあたりには著者の憶測や潤色が施されていると推測され、恐らくはそのせいなのだろうが、察することが出来ても読んでいる方としては興醒めだ。

 ただし、そう踏まえた上でも興味深いエピソードは幾つかある。特に、新興宗教団体が行ったコックリさんの儀式がきっかけで女子高生三名がいちどに取り憑かれ、儀式を行った団体は手も足も出なかった、という話には色々と感じるものがある。

 巻頭と巻末に添えられた陰陽道の解説の文章もあまりこなれておらず、端折っている部分が多すぎるため資料としても使い勝手が悪く、怪談集として読むとかなり失望する仕上がりだが、集中して“呪い”に関する話だけを収めた書籍というものが珍しく、そうした方向に興味のある方ならば試しに手に取ってみるのも悪くないだろう。

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