怖い本(6)

怖い本(5) 『怖い本(6)』

平山夢明

判型:文庫判

レーベル:ハルキ・ホラー文庫

版元:角川春樹事務所

発行:2006年7月18日

isbn:4758432449

本体価格:600円

商品ページ:[bk1amazon]

 もともとはケイブンシャ文庫時代の『「超」怖い話』より平山夢明氏担当分を抜粋する形で始まったが、2006年に入って書き下ろしとして再スタートを切ったシリーズ、累計6冊目にして復活2冊目。

 今年はこの夏、驚異的な量産体制を敷いている著者であるが、不思議なことにクオリティは落ちていない。類型的な話はあるし、全体でp200程度と決してヴォリュームは豊かではないが、しかしエピソード自体は驚くほど粒揃いになっている。『新耳袋』収録のあるエピソードを想起させる特異な1本『銀色』、読んでいる端から同じ経験をしてしまいそうな怖さのある『仰向け嫌い』、まったく説明不能の戦時の出来事『震魚』など、従来の“平山”テイストとは隔たった独特な風合いのエピソードが今回は盛り沢山で、すれっからしの怪談読者を自認するわたしが唸らされるほどの奥行きがあった。

 スタート時には『「超」怖い話』が中断していた本シリーズであるが、現在は竹書房文庫にて好調に巻を重ねており、そちらと並行しての復活は果たして住み分けが可能なのか、と最初こそ訝ったが、狂気と血みどろの怖さが充満するあちらに対し、本書はやや気品があるというか、落ち着いたエピソード、説明不能の現象を中心に押さえている印象で、この雰囲気を維持できるなら、今後も並行は可能かも知れない。取材は容易ではないだろうし、現在のペースではこれまで以上に著者の体調が気遣われるが、それでも可能な範囲で継続することを祈りたい。

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