2006年の映画鑑賞・総括

鑑賞した本数: 100本

 きっちり100本でした。もともと減少傾向だったのが、夏から秋にかけて更に減ったことで、最後の追い込みがなかったら3桁到達も危うかったでしょう。

 感想の通しナンバーが99しかないのは、モニター試写会にて鑑賞した作品が抜けているからです。正式公開になったらアップしようと思っていたのに、ギリギリで年を越してしまいました。とほ。

 ――が、実はもう公開まで1ヶ月を切っていて、しかもいつまで観たことを口外してはいけない、とかきちんと指示されていなかったはずなので、せっかくですから今日、思い切ってこのあとにアップしてしまいます。もし何か言われたら下げますが、ほとんど肯定しているので多分大丈夫だろう、多分。

最も多く訪れた劇場: VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ 35本

 観た本数は減っているのに、ここで観た回数はなんと去年より多い。うち5本が金田一耕助シリーズというのがポイントかも知れず。

イベントつきで観た回数: 21本

 うち7回は試写会でした。今年は従来よりも熱心に試写会に応募して、当たる率が高かった年でもあります。だがそれ以上に、「堀北真希を生で観る」ということに執着してやたらと舞台挨拶を狙ったのもきっと一因。

今年のお薦め傑作選。

 去年は意地でベスト10を作ってみましたが、今年は考えるほど頭がパニックを起こすので止めました。それよりは順位など関係なく、お気に入りの作品と、世間的にはあまり顧みられていないけど勿体ないのでは? というのをざざざと羅列してみます。

 感想でも触れていますが、これは優れたハードボイルドだと思うのです。口数の少ない無粋な男が、仕事仲間との約束を果たすために、彼を殺した男を連れて国境を渡る。ミステリの1ジャンルとしてのそれではなく、人物の資質を表す言葉としての“ハードボイルド”が、本編の主人公には実にぴったりと来る。かなり多くの賞を獲得しているのですが、日本ではミニシアター中心の配給だったため、あまり顧みられていないように見えます。

SAW3』とか『unknown/アンノウン』はもう別格として、これもよく出来ているのにあまり評判を耳にしなかった1本です。何処がいいのか解説するとあっさりネタを割ってしまいそうなので、誰でもいいから心置きなく話せる相手が欲しい、という本音もある。

 ホラーは敢えて2本。どっちも切れません。無理。

 前者はなんか、あとになればなるほどその質の高さが身に沁みてくるタイプの傑作。『ダークネス』といい、このジャウマ・バラゲロという監督は目の離せない人物になりつつあります。さっき観た『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 悪魔の管理人』も着想はシンプルながら実に配慮の行き届いた傑作でした。今後も期待大です。

 後者はその徹底した様式美が優れた逸品です。もとがゲームであることを過剰に意識して、普通の映画では珍しい斜め上から見下ろすアングルを多用したり、場面転換のブラックアウトがまるでローディングのように長引いたり、といった小技を用いる一方、ホラーとしての過剰さもふんだんに盛り込んである。エンドロールの異様な格好良さまで含めて、これはホラー好きでなくても1回観ておいて損はないと思います。

 ありゃコメディなのか? と首を傾げられるかも知れませんが、実際賞でのノミネートはコメディとしてなされているのがその証拠。煙草業界というよりは、世間的にいま悪人と見られている業界のスポークスマン、という仕事の苦悩と面白さを描ききった知的なコメディです。これにユーモアをまったく感じられない、悪意しか感じられないようなら、もー少し世の中を客観的に眺める努力をしたほうがいいと思う。

 さすがにそういうのまで丁寧にチェックしている余裕はなく、これを含めても片手で数えられるぐらいしか観ていないはずなのですが、それでも敢えてお薦めしておきたい。いわゆる館もののホラーですが、意外にも見過ごされていたある観点から物語を構築して、好事家をも唸らせるような結末が用意されている。現在はセルでも価格が安くなっているはずですから、これは是非ホラー愛好家には観ていただきたい。

 もう正直、評価なんて出来ません。既に『ユナイテッド93』はアカデミー前哨戦にてかなり高い評価を得ていますが、奇手で911以降の中東の現実を抉り取った『セプテンバー・テープ』も、純然たるドラマとして構築されている『ワールド〜』も、評価云々抜きにして観て、何かを感じていただきたい。

 映画賞ばりに“作品賞”“主演賞”と役割別に表彰するなら、間違いなく私はこの人に“脚本賞”を贈呈します。だって、この4本を1年間のうちに繰り出されたらもう降参するしかないでしょう。アンサンブル・キャストの金字塔になってしまった感のある『クラッシュ』、その方法論を敷衍してアメリカ人の中でも複雑な感情を齎す戦いの真の姿を描き出した『父親たちの星条旗』、こちらは原案のみですが少なくとも世界に対して日本人のおかれていた境遇を巧みに示唆した『硫黄島からの手紙』、そして一転、ダーク・ヒーローを中心に据えて巧みな伏線とどんでん返しを織り成しアクションすらきちんと物語に溶け込ませた『〜カジノ・ロワイヤル』。方法論を確立しながらそこに多彩なアプローチがあることを明瞭に示している。たまたま最も脂の乗った時期に当たっただけかも知れませんが、それにしても素晴らしい。今後も注目しましょう。

 ――とまあ、こんな感じでいかがでしょう。『ブロークバック・マウンテン』とか『トム・ヤム・クン!』とか『時をかける少女』のように明らかに秀でている作品、『記憶の棘』『ハードキャンディ』のような侮りがたいものも言及したかったのですが、やりだすときりがないので。

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