『怪談新耳袋殴り込み!劇場版<関東編>』

『怪談新耳袋殴り込み!劇場版<関東編>』

監督&構成:村上賢司 / プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ、山口幸彦、後藤剛 / 撮影&編集:青木勝紀 / 音楽:スキャット後藤 / 出演:ギンティ小林、田野邊尚人、村上賢司、後藤剛、青木勝紀、市川力夫、山口幸彦、木原浩勝、中山市朗、小塩隆之 / 制作プロダクション:シャイカー / 配給:KING RECORDS

2011年日本作品 / 上映時間:1時間30分

2011年7月23日日本公開

2011年8月10日映像ソフト発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.kingrecords.co.jp/nagurikomi/

シアターN渋谷にて初見(2011/07/23) ※初日舞台挨拶つき上映



[粗筋]

 怪談本の金字塔のひとつ『新耳袋』のなかに登場する心霊スポットに、実際に訪れてみたい。本物の霊を目の当たりにしたい――そんな想いから始まった『新耳袋殴り込み!』シリーズ。当初はドラマ版の特典映像であったが、2008年から単独でリリースされるようになり、4年目となる2011年、遂に劇場へと進出することとなった。

 ドラマ及び劇場で展開された『怪談新耳袋』シリーズを手懸けた村上賢司を新たに監督に迎え、新生“新耳Gメン”がまず挑んだのは――コックリさん。

 野郎ばかりでまったく華のない一同は前回、市松人形の“いせ”を唯一の女性隊員として迎えたが、恐山に置き去りにした彼女に代わって新たな人形を隊員として招き入れた。まだ名前のない彼女に名前を与えるべく、これも前回に倣ってコックリさんの判断を仰いだのだ。

 そうして“はち”という名前を得た新しい女性隊員とともに、まず赴いたのは、都内に存在するスポット八○○城址――道中、一同は初めて気がついた。“はち”とは八○○の“八”だったのだ、と……

[感想]

 粗筋で語ったとおり、もともとはDVDでリリースされていたシリーズの劇場進出作である――が、チラシなどでは“DVD発売記念上映”などと銘打たれていたりして、いったいどちらが先なのかややこしい。いずれにせよ、DVDのシリーズで培った雰囲気などがあるので、もし不安があるならいちど先行する作品のうち1本でもレンタルで鑑賞したうえ、観るか否か判断することをお薦めする。……そうすれば、本篇に横溢する大人の悪ふざけ感が許せるか否か、自分に問いかける機会が得られるので。

 本来、このシリーズにおける危険な行為の数々は、別に“悪ふざけ”を意図してやっているわけではない。何とか本物の怪奇映像をカメラに収めるため、普通そうした場所ではヤってはいけない行為に及ぶことで“あちら”の皆様を挑発する、という意図で振る舞っているのである。それが結果として悪ふざけに見えているだけで、別に遊んでいるわけではない。遊んでいるように見えるのは、そうしなきゃ怖くて仕方がないからだ。

 とは言い条、大の大人がしょーもない行為に及び、微かな物音や怪しい気配に慌てふためき恐怖する様は、他人事だからではあるが実に可笑しい。それでいて、この挑発行為はある程度成果を上げており、だからこそこのシリーズは強く支持されてきたわけだ。

 本篇でもその方向性は維持されている。劇場版であり、“スクリーンに幽霊の姿を映す”という目標を掲げているだけに、いつも以上に気合が入っているのも窺える。旧作では裏でのやり取りに尺を多く割いているきらいがあったが、本篇はほとんどがいわゆる心霊スポット付近での映像に終始しているのがいい証拠だろう。

 では、観客が望むほどの収穫があったのかというと――ちょっと素直には頷きかねる。

 実のところ、すべてのスポットで何らかの成果を上げているのは間違いないのだ。旧作では気のせい、勘違いであることがその場で解ってしまうようなことが多かったが、今回は確かに異様な出来事が相次ぎ、きちんと記録にも収められている。

 ただ、すべての観客の期待に応えることは出来ていない、と思う。詳述は避けるが、出来ればもっとくっきりとした、或いは解りやすく不気味な事態に遭遇して欲しかった、という嫌味を抱く人はいるだろう――どれほどクオリティの高い映像を収めてきたとしても、こういう悩みは解消しきれないものだが、本篇のレベルだと、たぶん不満を抱く人は多めになってしまう。

 ただし、それでもこの作品を劇場で観る価値はある、と私は言い切りたい。

 というのも、この作品は集団で、声に出して笑いながら鑑賞するのが想像以上に愉しいのだ。ミッション前のジャンケンで本気になり、突入してはいちいち醜態を晒す新耳Gメンたちの姿に大笑いするのが実に心地好い。DVDでも、友人たちを招いて一緒に大笑いして愉しんだ、という人は多いだろうが、その感覚を大きなスクリーンで、見ず知らずの人々と共有するのもまた一興だ。

 そして、存分に笑ったあと、帰りの暗い夜道で、或いはひとりきりの自分の部屋で、ふと新耳Gメンたちの挑戦に思いを馳せたとき、劇場ではさほど怖いと感じなかったはずなのに、にわかに震えが走るはずだ。あとになって、彼らがどれほど恐ろしい状況に身を置いていたのか、忽然と理解するその瞬間に、このドキュメンタリーが本来もたらそうとした感覚が味わえる。

 恐らく普通に自宅で観ても一粒で二度美味しい作品だが、これは案外、映画館で観た方がその楽しみを深く堪能できるように思う。彼らはきっと来年もどこかに突撃するだろうが、ふたたび劇場公開されるとは限らない。上映中に時間がやりくりできる方は、是非とも映画館に足を運んでいただきたい。

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