映画鑑賞のあとは、この夏2度目となるこのイベントへ。折りからの台風で遠慮する人も多かったのでは、と高を括っていたらとんでもない、結構な出席率でした。今回はダフ屋行為が確認できたため、対抗措置として当日券を敢えて発行したそうで、そのせいで若干密度も上がったようです。「台風に救われた」とは木原さんの弁ですが、そこだけはな。
今回も冒頭は宣伝ラッシュ。この夏は刊行物が多いのも事実ですが、『怪談新耳袋』と『隣之怪』がほぼ同時発売なのは勘弁して欲しかった。宣伝部分のトリにはまたしても映画秘宝の面々が登場、新刊のために以前イベントでも流された幽霊マンション取材の際のVTRを確認していたところ発見したという奇妙な音声を披露。そのあとは、このイベントに3回連続で登場している某嬢と2回ぶりの某氏が登壇、西浦和也氏の怪談イベント用とは思えないネタをほどほどに堪能。
休憩をおいての第2部には、先日怪談漫画ブログ『誘怪犯』を纏めた単行本を発売したばかりのうえやま洋介犬氏が登場。書き下ろしの漫画をこのイベント限定で披露したり、自ら仕入れた実話怪談を開陳されました。ただ、ここでもどっちかというと某嬢の話したエピソードの方が印象的でした。短くてもキレのいい話を繰り出せるこの子はほんとーに凄い。近々本業でイベントがあるそうですが、なんとなく足を運んでしまいそうだ。本業ではもうちょっとキャラが違う、と承知していても。雑談をさせても惹きつけますし、何だか本当にファンになりそうです。
もうひとつ休みを挟んでの第3部は初の試み。若手声優ふたりに取材をさせ、蒐集したエピソードを自ら語らせるというもの。実験としては面白いとは思うのですが……正直、人選と披露する場所を間違えた、という印象。最初に話し始めた男性の声優は、怪談の前にいきなり肛門検診に行ったときの話をしはじめたのですが、オチがなくてぐだぐだの内容、そのあとに披露した怪談とも関わりがなく、なんであんな話をしたのかがまったく解らない。この時点で怪しんではいましたが、話し始めた怪談も、怪談に親しんだ耳にはのっけから胡散臭いと感じるような代物。案の定、男性が話し終えると、木原氏が遠慮なくツッコミまくっていました。続く女性声優の話はまだ内容的にずっと実話らしく、本当は怖い話が大の苦手というだけあって自分でレポートを読み上げながら声が微かに震えている感じが却って新鮮な雰囲気を醸していましたが、しかしこのイベントの水準からするとかなり低い。試みとしては面白かったのですが、あの様子では、勉強会を開いてもっと研鑽してからでないと到底このイベントで披露出来るレベルにはなりません。男性声優は木原氏からの「リベンジするか?」という挑発に頷いていましたが……1回では成長は見込めないんじゃないかなあ。
男性声優の無駄話のせいでかなり時間が押していましたが、ここでもういちど休憩をおいて、最後の出し物は、西浦和也氏が書き下ろしたエピソードを、観客として常連であるベテラン声優・茶風林氏が朗読するというもの。さすがに慣れた人が文章を起こし、ベテランが読み上げただけあって、先刻の若手声優によるものとは雲泥の差。かなり推敲が甘く無駄な叙述が多く、やたらと長引いてしまったのが残念ですが、内容的にはなかなか。ただそれでも、朗読という形にするために視点人物を作り潤色を施した朗読ヴァージョンよりも、そのあとに西浦氏が解説として簡単に説明した、体験当時は披露する水準になかったと思われた話が最近の取材によって突如怪談として完成された、という経緯のほうが聞いていて面白かった、というのはやっぱり失敗だと思われます。
今回は実験やいつもと違った趣向が色々あったものの、怪談イベントとしては低調な印象でした。多忙を極め、必ずしも常に新しい話が取材できているとは限らない状況なのは察せられますが、しかしもっときちんと“怪談”を聞かせていただきたい。また客を相手に実験をするのが絶対に悪いとは言いませんが、本来素人である人物に怪談を披露させるなら、予め多少なりとも鍛えてあげてからにしてください。あの若手声優ふたり、特に男性の下手さは多分に本人の研鑽不足が原因ではありますが、あの状態で舞台に上げてしまった点では木原氏や担当マネージャーも安易、迂闊の誹りは免れないと思います。
次は来月。今度こそ某嬢の豊潤なストックを堪能させていただきたいところ。いっそ某嬢メインのイベントに潜入して怪談話せーカミングアウトしろーアイドルなんてやめて怪談家になっちまえーと煽ろうかしら。
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