『地獄少女 朱蘰(あけかづら)』だいたい終了。

 作業の混み合っている時期に重なってしまったため牛歩の如くだらだらとでしたが、ちまちまと進めてようやく概ね終了しました。概ね、というのは、CGの回収率がまだ9割程度だからなのですが、分岐の様子からもう大幅に違ったエピソードはないと思われるので、とりあえず終わったものと見做します。

 アニメのスタイルをちゃんと反映した話運びは決して悪くない。プレイヤーキャラ・高橋瑞穂を中心にした人間関係の中で複数の“地獄少女”に対する依頼を描くことで、復讐とそれが生む感情の機微を捉えようとした意欲もなかなか。

 ただ、原作の、非現実的な部分も多数踏襲しているのはどうかと思う。特にいただけないのは、作中発生する“事件”に対する警察の捜査が必要以上に手を抜いているように描かれていること。主人公の家族が見舞われた不幸の件は、まともに聞き込みをしていればあっさり真相に辿り着ける(実際、瑞穂がそれで事実を嗅ぎつけている)のにこの時点まで警察が何もしていないというのは変。別のルートにてリアルタイムで発生する別の事件に至っては、瑞穂は閻魔あいに真相を教えてもらう形になっていますが、こちらだって少しまともに捜査をすればすぐに犯人は見つかるでしょう。正直描く側が警察に悪意を抱いているとしか思えない。

 また地獄少女に対する依頼の仕方について、少々気になるところもある。それ相応の恨みがないとホームページが開かない、という条件は押さえているものの、怨みを晴らす相手の具体的な名前が解らなくても依頼を受けてくれたでしょうか――と、ただこれはいま振り返ってみると原作がややいい加減に捉えていたきらいがあって、一部に対象不特定のまま依頼を受けていた話もあった記憶があるので、まあいいか。突っこむときりがないわ。

地獄少女』と言い条、閻魔あい以下レギュラー・メンバーの出番が少ないのも勿体ない――とは言え、ルール通りに話を作っていくと本来このくらい出番が少なくなってしまうのが当然なので、これも避けようのないところ。ただそれでも、折角名前を冠してゲームを作っているのですから、なるべく顔を出す機会を設けて欲しかったところ。「恨み聞き届けたり」のフレーズを任されている輪入道なんかまだいいほうで、一目連とか骨女なんか本当に申し訳程度しか出番がない。そのくせこの期に及んで柴田親子はちゃんと露出しているのがおかしい。はじめちゃんたら相変わらず木偶の坊だし。

 単純にゲームとして見ても、AVGなのに話を先に進めるための手懸かりがほとんどなく、いちおう選択ごとに時間が進んでいるのに実質コマンド総当たりに等しい感しか齎さない、理念の“古さ”が引っ掛かる。移動した先が空振りであったときの捨てメッセージもパターンが狭すぎて、ストーリーが佳境に入る前に飽きてしまうのも問題です。

 基本ストーリーやその狙いがよく出来ているのを作り手も自覚していたのでしょうが、そこに依存しすぎて、ゲームとしての作りに弛みが生じているのが最大の問題です。ぶっちゃけた話、原作の趣向を丁寧に踏まえているか否かよりもそっちのほうが大事だと思うのですが、ここを手抜きにしてしまったためにだいぶ印象を落としています。また、いちばん最後、肝心な場面において糸を引く引かないの選択がプレイヤーに出来るようにしておいて欲しかった。ここをきちんと分けていれば、原作には無理だった類の、感情表現の奥行きを深くする試みが出来たはずで、それさえあればもっと高く評価できるのですけれど。

 全体としては、話的にもゲームとしての仕上がりから見ても、原作をよほど好きか、ネタとして受け入れる姿勢が整っている人でないと楽しめない出来。終盤の展開とその狙いが悪くなかっただけに、色々と勿体ない作品でした――って何だ結局そういうとこまで原作通りか! ということはある意味で完璧だったと言えなくもないのか。

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