昨日に続いてのイベントですが狙ったわけじゃありません……ていうか固定スケジュールと初日舞台挨拶の日程なんか私にコントロールできませんもの。たまにはこういうこともある。
作品は、まあここを御覧の方には説明不要でしょう、京極夏彦の第二長篇にして未だに最高傑作の誉れも高い傑作本格ミステリを、『姑獲鳥の夏』のキャストを関口巽役以外すべて引き継ぎ、『伝染歌』の原田眞人監督が映像化した『魍魎の匣』(Showgate・配給)。原作のヴォリュームをそのままで盛り込めるはずはないので大幅な改稿は承知のうえ、ちゃんと雰囲気や主な仕掛けを映像的に再現していますし、さすがに映画について知悉している原田監督なだけあって、細かな擽りやプロット上の工夫も巧み。メインキャラクターたちの魅力を引き出しユーモアも盛り込んでいますので、充分にいい出来だと思います……ただ、エピローグのあれはもっと正確に再現して欲しかった。他は潤色があってもここだけはオーソドックスに攻めて欲しかった。ていうか言い方も微妙に違うんじゃーっ!! ……でもそこを除けば、かなりいい映像化でした。どちらかというと世界の見せ方自体に外連味の強かった前作よりも、映画らしく仕上がっている。
で、上映終了するとほぼ間髪置かずに舞台挨拶。場所は日本でも屈指の規模を誇る新宿ミラノ1、実は前作『姑獲鳥の夏』のときもここでやっていたのですが、あの時と同様に見事にほぼ満席、立ち見も出る大盛況で、舞台から眺めると相当に壮観だったようです。
登壇したのは堤真一、阿部寛、椎名桔平の主要キャストにして同い年の三人組と紅一点*1の田中麗奈、監督の原田眞人に、原作者の京極夏彦。現場は相当に和やかだったそうですが、それぞれの最初の挨拶も仲の良さを窺わせる軽快なものでした。今回は珍しく印象に残ったところをメモに取ってみた。
思い入れのある場面は? と問われた原田監督が挙げたのは、CMにも使用されている、まさに今回挨拶に訪れた4人が横一列に並んだあの場面。実は当初、道を歩いてくるところを撮るはずが、強行スケジュールでスタッフが疲労困憊となっていたため、苦肉の策でああいった形になった。が、そのお陰で却って予想よりも印象に残るシーンになった、との弁。ほか、木場修役の宮迫博之のスケジュールがどうしてもほかのキャストと合わせにくく、結果として合流する場面が減ってしまったが、それが意外と効果的であったことなど、かなり厳しい状況が却ってプラスに作用した箇所が多かった、ということでした。当時はただ辛いだけだったけど、あとでネタに出来ればいいか、ぐらいに考えていたそうです。
前述の通りメインとなった三人は全くの同い年で、初共演の椎名桔平も含めて現場ではかなり意気投合していたそうですが、そんな息の合ったところが発揮されたのは? という問いに、阿部寛は編集者・鳥口から三人の関係を訊ねられて、一斉に思い思いに話し始める場面を挙げていました。確かにユニークでなかなか印象に残っていたのですが、実はあそこは監督の指示でアドリブで話しており、2分近くカメラを回していたせいで最後の方はネタがなくなってしまったという。でもとりあえず撮り終えたあとで、最初に顔を見合わせる間を入れてもう一回、と無情の指示があったらしい……作中で使用されたのはこの二回目のもので、その終盤ネタがなくなって困っている一回目のほうは映像特典にする、と原田監督が明言。さあみんな覚えておけ。
椎名桔平が妙に長ったらしく話をしているのを堤真一に揶揄されたり、先輩方との仕事はどうだったか、という質問に戦々恐々としていた田中麗奈を挟んで、好きなシーンはどれですか? と問われた原作者の京極夏彦は、久保竣公を演じた宮藤官九郎の、状況にそぐわないユーモラスな台詞を発する場面を挙げていました。ここは私も印象に残っていたので、さもありなんと納得。
最後、締めの挨拶のときに原田監督は、既に出始めている動員数は『ナショナル・トレジャー』といい勝負をしているが、負けたくないので是非とも宣伝を、と念を押していました。……舞台挨拶で周囲の方にも広めてください、と請うのはよくあることですが、論調が如何にもディープな映画マニアらしくて、ある意味微笑ましかった。
しかし前述の通り、思い入れの点から文句をつけたいところはありますが、全体の出来は良かったので、素直にお薦めしておきたいと思います。ただ私と同じくエピローグに思い入れのある方はとりあえず覚悟を決めておけ、と申し添えた上で、ですが。
*1:司会は除く。……いちおうね。
コメント