『3年B組金八先生第8期』第12回

 正月。暢気に浮かれている生徒もいるが、一流高を目指す生徒たちは塾の強化コースを受講したりと忙しない。だが、それどころではない生徒もいた――たとえば大将。父の家庭内暴力に悩まされ、悪い連中とつるむようになっていた彼は、仲間たちのオヤジ狩りに付き合っているところを警察に目撃され、たまたま両親を空港に送った帰りだった美香に匿われる。美香の家庭は裕福だが、大将とは違う形で崩壊しており、ふたりは奇妙な親近感を覚える。他方、なまじ成績が優秀であったばかりに交際に反対され、渋々強化コースを受講していた彩華は、交際相手・宏樹が父親と口論の末に怪我をさせ、殺してしまったと勘違いして飛び出してきたという報せを受け、彼と逃避行に赴く。その頃、金八先生は我が家に娘・乙女の交際相手である湯山を初めて迎え、膝を突きあわせての対話を始めていた。金八先生は湯山が語った事情の断片に理解を示し、ようやく落ち着いて話が出来るかと思った矢先、宏樹の担任である遠藤が飛び込んできた……

 年明け最初の1回は拡大2時間スペシャル。お陰様で軸が3本絡まる盛り沢山ぶり、ですがきちんと恋愛を主題としているあたり、今シリーズの堅実さが窺えます。さながらロミオとジュリエットと化した生徒たちを主軸に、金八先生の娘・乙女の交際相手が抱えていた一筋縄ではいかない事情、更に大将の家庭の事情を絡めて描いていく。やもすると美談にしてしまいかねない中学生同士の恋愛を、極めてリアルに辿っていったのち、自然に彼らの気持ちを解していく金八先生の手管が絶妙です。

 何せこのシリーズの恋愛は、第1期で15歳の出産をやってしまったため、何処か過剰に描きすぎなきらいがありましたが、今回やっといちばん自然なかたちを示したという点でも意義が深い。ドラマティックでも清潔でもないんだよ、と穏やかに語るのがいいのです。そして、真摯に行った授業が、別の問題を抱える生徒に対しても響いて変化を齎していく。次回はどうやら大将の問題に移るようですが、その話運びも巧みです。ほんとーに、回を重ねるごとに感触が良くなっているぞ。

 ただ一点気の毒なのは、少し無思慮な部分もありましたが、実は彩華よりも先に正しい結論を導きかけていた彼氏の扱いがちょっと悪いこと。最後もう少しフォローしてあげても良かったのにー。金八先生が担任でなくても、彼の国語も受け持っているでしょうに。いささか雑ではありますが、かなり素直でいい少年と思われるだけに、余計に気の毒だ。

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