『ゴルゴ13』Target.7 G線上の狙撃

 名門キングスフィル管弦楽団との共演で名を馳せたヴァイオリン奏者シンプソンは、だがアンコールで『G線上のアリア』を演奏中に肝心のG弦を切って演奏を中断する、という失態をしでかして以来、ヴァイオリンが弾けなくなってしまう。重要なチャリティ・コンサートを控えて楽団はシンプソンを外し、代わりに彼のライヴァルにあたるロシア人奏者のケルンスキーを臨時で招き入れた。屈辱を覚えたシンプソンは、ライヴァルに同じ恥をかかせるべく、ゴルゴを雇い、途方もない計画を託す……

 これはこの間購入した特別編集の文庫本に収録されていたので、いい具合に原作を知ったうえで鑑賞できました。そのお陰で、“アカ”というフレーズを排除したり、意味のないロビーでの映像鑑賞というシークエンスを外すなど、如何にも現代ならではの配慮が確かめられたのでちょっと安心。ケルンスキーの言動から極端な政治色を省いたのも、脚色としては正しいと思います。物語の求める結論にとって、彼自身があそこまでダーティである必要はないものね。

 それにしても、諸般事情から今回よりこれの録画は地デジのハイビジョン画質で行っているのですが、そーすると従来は気になっていた作画のクオリティも、なんかそんなに悪いように思えなくなるのが不思議。やっぱり濃すぎて動きに乏しい絵柄は気になりますが、中心人物をくっきりと描いているので、がみがみ言うほどのことではないでしょう。

 全体の話の流れは原作通り、ですがケルンスキーを人格者として描いているために、その苦みがより引き立っている。原作自体がゴルゴのあり得ないほど高い技術を活用しつつ、展開そのものに苦みを添えた良質のエピソードでしたが、その味を壊していないので、個人的には今のところアニメ版で屈指の1本だと思います。

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