『薬師寺涼子の怪奇事件簿』ファイル09-C　高輪のプリンセス

　石動瑠璃子に取り戻されたはずのもなみが、雨のなか泉田を頼ってきた。泉田と一緒にいることを望むもなみを、涼子はふたたび自分のマンションに匿うが……

　うーん、依然として軸はぶれっぱなし。アニメとしては泉田視点だけではなく、別の視点からも語る必要があるわけですし、一定以上の尺のあるシリーズを支えるための要素が必要なのも事実ですが、それに供給するために涼子のコピーたるもなみ、というのはやっぱりいただけない。意図的に成長させた途端にいまいち可愛くなくなってるし。

　だがその点をさっ引いても、今回の話は不自然なところが多すぎる。何故室町警視は泉田に情報を提供しようとしたのか、もなみはどうやって脱出したのか、それをどーしてあんな安易な連れ戻し方をしたのか。尾行に使われたその他の部下の行動もあまりに素人っぽいし、そもそもクライマックスの展開はどんな意図で仕組んだのか。安易に乗り込んでいく涼子も涼子ですが、こんな話運びでうまく行くと思うほうも少し頭が悪すぎます。

　取り柄だった絵の質も今回は全体にやや衰え気味。話が不出来な分だけ奮闘して欲しかったところですが、なんかあからさまにやる気を失っているように見えました。いちおう薬師寺涼子シリーズは好きなので、全体で安定していればＤＶＤ買ってもいいかなー、と思っていたのですが、このクライマックスのグダグダぶりを見ているうちに意欲が損なわれてきました。