『放送禁止』

放送禁止1 [DVD]

監督・脚本・企画:長江俊和 / プロデューサー:春名剛生(フジテレビ)、角井英之 / 撮影監督:平尾徹 / 美術プロデューサー:本田邦宏 / メイク:大野悦香 / VE:須藤剛史 / 編集:蹄和行 / 音響効果:小堀博孝 / 出演:瑠川あつこ、町沢静夫、竹本良 / ナレーター:高田裕司 / 制作:フジテレビ、イースト / DVD発売元:Pony Canyon

2003年日本作品 / 上映時間:48分

2003年4月1日フジテレビ系列にて放映

2006年8月25日DVD発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/07/17)



[粗筋]

 2000年4月から5月にかけて撮影されながら、結局放送には用いられなかった、ドキュメンタリー用の素材映像がある。そこには、公表を憚るような、信じがたい事実が記録されていた。

 きっかけは、若者たちが立て続けに失踪したことである。とある廃ビルに肝試しとして潜入した若者4名のうち3人までが相次いで行方をくらまし、残るひとりも「今度は自分が消える番ではないか」と怯えていた。

 レポーターの佐伯円をはじめとする番組のスタッフは廃ビルでの取材や、唯一残っていた大橋という青年へのインタビューを行い真相を探ろうとするが、そのうちに大橋も所在不明となり、事態はいっそう深刻化していく。

 やがてスタッフは取材映像と、関係者の遺留品から、ある手懸かりを発見し、重要な参考人物に辿り着いた。しかし、そこでカメラは衝撃的な出来事に遭遇する……

[感想]

 フジテレビ系列にて深夜、不定期に放送され好評を博したシリーズの記念すべき第1作である。

 第1作だから、という部分も大きいのだろうが、あまり仕上がりはこなれていない。ノンフィクションだと思わせるには色々な場所に不自然な印象が残っている。何故この段階でレポーターが話し始めるのか、ドキュメンタリーとして不必要な場面でどうしてフィルムが回っているのか。日本ではこのスタイルにおける原点の『邪願霊』よりはまだましになっているものの、意図して深夜に突然放送し、本当に“放送できなかったドキュメンタリー素材”と見せかけようとするにはまだ練り込みが甘い。こと、終盤で長尺に亘ってインタビューを受ける人物の、演技であることが見え見えの表情や台詞回しはかなり興醒めだった。

 続く『放送禁止2 ある呪われた大家族』は作中でこそ真相が語られないとはいえ、かなり露骨に手懸かりを示しているが、本篇は観終わってもいまいち事情が解りにくい。目敏い人であれば、提示された映像のなかに一貫した“違和感”が盛り込まれていることに気づくが、ではアレはいったい何を示唆しているのか、というのは明確に判断しがたい。そのため、私と同じように2作目を見て惹かれ、1作目に当たってみた、という人は少々戸惑うかも知れない。

 だが、ある主題を持つドラマとして、本篇の描き方は決して間違っていないのだ。いくら探っても全体像は把握できず、まるで不定形の化物を泥濘に手を突っこんで捜しているような不安を覚える、それこそがこの主題の醍醐味とも言える。従って本篇のように、キーワードは明確だがそれらが指し示す先が意味不明のまま終わるのは、趣向の掘り下げ方としては合っている。

 しかしそれでも、もうちょっと伏線や、仕掛けを多く施した方が良かったように思う。深夜帯の放送、当初は好評を博するなどと想像できなかったのだから、当然予算も少なかっただろうし、50分足らずの尺では限界があったのだろうが、第2作の出来映えからすると、まだ工夫の余地はあったように思う。

 と、あれこれ腐してはみたが、本篇はまずテレビで放送されることを大前提として制作された映像として極めて意欲的な作品であり、好評を博したのも頷ける。一部で支持され、劇場版にまで発展したあたり、世の中捨てたものではない。

関連作品:

放送禁止2 ある呪われた大家族

コメント

タイトルとURLをコピーしました