『アナトミー2』

アナトミー2 [DVD]

原題:“Anatomie2” / 監督・脚本:ステファン・ルツォヴィツキー / 製作:ヤコブ・クラウセン、トマス・ヴュブケ、アンドレア・ウィルソン / 製作総指揮:クラウディア・ロウ / 撮影監督:アンドレア・バーガー / プロダクション・デザイナー:ウルリカ・アンダーソン / 編集:ハンス・フンク / 衣装:ニコール・フィシュナラー / 視覚効果スーパーヴァイザー:アーレン・カストナー=ディラーゴ / キャスティング:ネッシー・ネシュラウアー / 音楽:マリウス・ルーランド / 出演:バーナビー・メチュラート、ヘルベルト・クナウプ、ハイケ・マカッチュ、ロージー・アルヴァレス、ヨアキム・ベスメイヤー、ハンノ・コフラー、フランカ・ポテンテ / 映像ソフト発売:Sony Pictures Entertainment

2003年ドイツ作品 / 上映時間:1時間41分 / 日本語字幕:税田春介

2004年6月23日DVD日本盤発売

2008年1月23日DVD日本最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/10/27)



[粗筋]

 医学生のヨー(バーナビー・メチュラート)は希望が叶い、晴れて名門医大インターンとしての勤務が決まる。彼には他の医学生よりも明確な目標があった。遺伝性の筋萎縮症を発病させ、車椅子での生活を余儀なくされている弟ウィリー(ハンノ・コフラー)を、いつか健康体にすること。

 自信を持って研修に臨んだヨーだったが、現実はそう甘くはなかった。細かな診察と、死亡診断に駆り出されてろくに研究も出来ない毎日に、疲れと無力感ばかりが蓄積していく。大金持ちしかまともに医療を受けられない現状を改善する、という理想さえ忘れてしまいそうなほどだった。

 だが、そんなヨーの運命が、ある日を境に一変する。きっかけは、フィリピンからの留学生である看護師のリー(ロージー・アルヴァレス)たちから、ひとりの患者を託されたことにあった。その少女は2日前から鼻血が止まらなくなっているが、家に金がないため診察を受けられない。そこで看護師たちはヨーに、人のいない隙にMRIを使って診察してもらうよう頼んできたのだ。当然ながら重大な規則違反であり、当初は渋ったヨーだったが、けっきょく根負けして診察に臨む。

 少女は頭蓋底骨折を起こしており、一刻を争う状況だった。ヨーは腹を括り、リーたち看護師の手を借りて極秘で内視鏡手術を施した。

 手術そのものは成功裏に終わったが、間もなくヨーはミュラー=ラルース教授(ヘルベルト・クナウプ)に呼び出しを受けた。解雇も覚悟していたヨーに、しかしミュラー教授は意外な提案をしてくる。近々、ノーベル賞を得た医学博士を招いて、内々のゼミを開くので、参加してみないか、というのだ。

 解雇どころか、規則を無視してでも診察を行ったヨーの姿勢を評価して、エリート揃いのグループに招き入れるつもりらしい。予想を超えた成り行きに舞いあがるヨーだったが、彼は気づく由もない――それは医学界の抱える深い闇からの誘いであったのだ……

[感想]

 ドイツ医学界の闇を現代的なテンポと、古めかしい様式美とを織り交ぜて描き出したスリラー『アナトミー』の続篇である。ヒットを契機に製作された続篇は、1作目と監督が代わり作品のムードもかなり変わってしまうことがままあるが、本篇はステファン・ルツォヴィツキーが前作に引き続き監督・脚本を担当し、ゲスト出演扱いではあるが前作のヒロインであるフランカ・ポテンテも登場しているので、少なくとも正統的な続篇という雰囲気を作りだしている。

 しかし肝心の内容は、率直に言って、劣化した印象だ。前作は古い組織の戒律と、屍体保存のための技術といった科学的だがオカルトの香気も留めたモチーフを盛り込むことで、単純に医学を題材にしたスリラーと同一視できないムードを醸していたが、本篇は秘密結社のモチーフこそ残しているものの、秘密で行われる実験がいささかSFじみていて、妙に空々しい雰囲気がある。

 前作は人物を絞り込んでいたお陰で、終盤でヒロインたちを窮地に追い込む状況が本来の主題からずれてもサスペンスを保っていたが、本篇は登場人物が多く、危険な出来事を招く要素も人物もそのたびごとに違いすぎて、そもそも何が問題だったのか把握しづらい。黒幕側に着いている人間のなかにも良心の呵責に苦しんでいる者がいて、そのあたりを描写していることには好感が持てるのだが、展開上さほど活かせていないのは残念だ。

 主人公も事態の黒幕も、揃って言動が安易すぎるのも気になる。あれほど明確な目的がありながら、かなり胡乱な面をちらつかせる組織にあっさりと靡いてしまった主人公の言動はやはり軽率すぎるし、対する黒幕は、現実についての認識が不自然なくらいに屈折している。あそこまで極端なことをしていては、どれほどの悪事だっていずれは発覚するだろうし、そう察知すればさすがに組織も庇い立てはしないだろう。終盤のいかにも悪役じみた物言いも、行きすぎていて違和感がある。

 こういった具合で、背景の作り込み、キャラクターの必然性などといった骨格部分には疑問符をつけざるを得ないのだが、目まぐるしく変化するストーリーと中盤以降のサスペンスの醸成は巧妙で、約100分、ほとんど飽きるところがないのは見事だ。人物関係が輻輳して、誰が主人公にとって敵なのか味方なのか解りづらい嫌味はあるが、それが観る側をハラハラさせている部分もある――伏線の張り方が安易なので、目敏い人だと次に何をやりたいのかだいたい察しはついてしまうが、そのあたりが堅実であることは否定できない。

 観終わったあともこれといって大きな余韻は残さないが、換言すればあとに引っかかりを残すことなく楽しめる作りである。その一方で、最後の最後に、普通ならば別の使い方をしていたそうなキャラクターに思わぬ見せ場を、エンドロールに添える形で用意しているセンスはなかなか風変わりでいい。

 前作よりも更にB級の仕上がりで、ムードもだいぶ軽くなってしまったが、とりあえず100分間はしっかりと楽しませてくれる作品だ。必見とは言わないが、気晴らしにはちょうどいい。

関連作品:

アナトミー

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