仮面の下の闇を暴け。

 きょうは意地でも初日に観たかった作品の封切り日です。しかも、丸の内ピカデリーのDolby Cinemaでかかるのも解っていたから、他の映画館で観る気はまったくありませんでした。
 ……まさか、朝いちばんの回がないとは思わなかった。
 昨年公開された嵐のライブ映画が未だ居座っていて、これが朝イチの枠を産めてしまっている。そのため、私に都合のいい時間を選ぶと、いつもの時間に透析を出来ない。
 木曜日に普通に透析をしているなら金曜日を空けることも可能ですが、しかし今週は茶風林氏の配信イベントを楽しむべく、木曜日を既に空けている。幸い、金曜日の午前中は母が自宅にいて介助をお願い出来るので、朝から透析をすることに。前夜はお酒を嗜みながら楽しむ趣旨のイベントでしたが、体重増加はさほどではなかったため、最低限の時間で終わらせることにしました。明日はいつも実施している時間帯にやるので、そこで帳尻を合わせます。

 今日もいい陽気です、がバイクではなく電車を使って移動。きのうの様子では、15時台の駐車場はたぶん最安値では取れない。だったら、はなから電車を使う方が無難です……しかし、バイクと同じ感じで余裕を持って行動した結果、若干持て余してしまった。
 訪れたのは丸の内ピカデリーのDolby CINEMAスクリーン。鑑賞したのは、『ダークナイト ライジング』以来となる単独作品、ヒーローとなって2年を経たバットマンと謎を仕掛けるサイコキラー《リドラー》の対決を、ノワールのテイストで描いたTHE BATMAN-ザ・バットマン-(字幕・Dolby Cinema)』(Warner Bros.配給)
 なにせ、『ジャスティス・リーグ』が微妙な評価を受けていた頃から既にバットマン単独作品の告知はされていたため、その後の紆余曲折に一喜一憂しながら待っていた1本でした。当初は『ジャスティス・リーグ』から繋がるかたちで、ベン・アフレックが監督と主演を兼ねる、と発表されていたのが、やがてアフレックが監督を降りて、マット・リーヴス監督に代わって、ついにはアフレックがバットマンそのものを離れる流れになってしまった。それはそれでちょっと残念でしたが、『ジャスティス・リーグ』に繋がるDCEUと一線を画し、時代背景を過去に、ノワール調で描く、という概要が出てきたあたりから、個人的にはものすごぉぉく期待が高まったのです――『ダークナイト』や『ウォッチメン』を理想とする私にしてみれば、それこそ、私が見たかったタイプのヒーロー映画でしたから。
 ……いい意味で期待通りでした。そう、私はこういうのが欲しかったのよー!
 主人公ブルース・ウェインのモノローグで綴られる《バットマン》のスタンスに、彼を狙い撃ちにした“謎掛け”で挑んでくる《リドラー》。さながら、ヒーロー映画の文脈で語られる『セブン』の様相。そしてそこから浮き彫りになっていく、《バットマン》という存在の危うさ。
 テーマとしてはそれこそ『ダークナイト』シリーズにも近しいものがあるのですが、本篇は更にその本質に深く食い込んでいる。次第に立ち上がっていく“真相”には、それこそ恐怖すら滲んできます。ミステリ的な興趣をしっかり盛り込みながら、クライマックスでは正しくヒーロー映画に立ち戻る、ほんとーに私が求めていた物語。
 マット・リーヴス監督は昔からヴィジュアルの質も高かったのですが、本篇は多くのシーンにそのこだわりが濃密に窺える。冒頭の、覗き見する男の目線による描写から、サスペンス的な表現、そして黒いスーツを活かした、闇から現れ闇に消えていくバットマンの格好良くも恐怖を誘う活躍ぶり。予告にも使われている尋常でない迫力で描かれるカーチェイスが出色ですが、心理サスペンスを盛り上げる構図、色調がすべて絶品。
 内容は重量がありますが、それに相応しい充実感が味わえる。本当に、最高の仕上がり。個人的には『ダークナイト』とどちらがいいか? と問われたら悩むくらいの傑作。

 鑑賞後はまっすぐ帰宅。半ば夢心地でございました。

コメント

  1. […] 原題:“The Batman” / 監督:マット・リーヴス / 脚本:マット・リーヴス、ピーター・クレイグ / 製作:ディラン・クラーク、マット・リーヴス /  […]

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