原題:“Meet Dave” / 監督:ブライアン・ロビンス / 脚本:ロブ・グリーンバーグ、ビル・コーベット / 製作:ジョン・バーグ、デヴィッド・T・フレンドリー、トッド・コマーニキ / 製作総指揮:アーノン・ミルチャン、トーマス・M・ハメル / 撮影監督:クラーク・マシス,ASC / プロダクション・デザイナー:クレイ・A・グリフィス / 編集:ネッド・バスティール,ACE / 衣装:ルース・カーター / 視覚効果スーパーヴァイザー:マーク・ステットソン / キャスティング:ジュエル・ベストロップ,CSA、セス・ヤンクルウィッツ,CSA / 音楽:ジョン・デブニー / 出演:エディ・マーフィ、エリザベス・バンクス、ジュダ・フリードランダー、ゲイブリエル・ユニオン、オースティン・リンド・マイヤーズ、エド・ヘルムズ、スコット・カーン、マイク・オマリー、ケヴィン・ハート、パット・キルペイン、マーク・ブルカス、ジム・ターナー、アダム・トメイ / フレンドリー・フィルムズ/ガイ・ウォークス・イントゥ・ア・バー製作 / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント
2008年アメリカ作品 / 上映時間:1時間31分 / 日本語字幕:?
2009年5月2日DVD日本盤発売 [bk1/amazon]
DVDにて初見(2009/12/29)
[粗筋]
ジョシュ・モリソン(オースティン・リンド・マイヤーズ)は、船長だった父を事故で失って以来、母ジーナ(エリザベス・バンクス)とふたりきりで暮らしている。背も小さく弱虫の彼の趣味は星を見ることぐらい。たまたま彼の部屋に降ってきた小さな“隕石”のレポートで表彰されたのが数少ない誇りだった。
ジョシュの部屋に隕石が落ちて3ヶ月後、ジーナが車を飛ばしていたとき、信号無視した男を撥ねてしまう。焦ったジーナだが、彼女が通報しようとしている隙に男は姿をくらましてしまう。
翌る朝、ジョシュは家の外にひとりの男がぼんやりと突っ立っているのを発見した。その男を確かめてジーナは愕然とする。それは前日、彼女が車で撥ねてしまった男であった。
話しかけても奇妙な返事ばかりする男に訝しさを覚えながらも、ジーナはお詫びのために男を家に招き食事を御馳走しようとする。だが男は、ジョシュが表彰されたときの写真を見るなり、彼と、彼の持っている“石”の所在を訊ねた。ジーナが「今は学校にいる」と告げると、男は部屋を出て行った。
ジーナにデイブ・ミン・チャン(エディ・マーフィ)と名乗ったこの男――実は生き物ではない。その正体は、惑星ニルからある目的を持って飛来した宇宙船である――
[感想]
本篇は当初、日本でも劇場公開の予定があり、2008年夏頃には20世紀フォックスの公開予定作品の一覧にも載っていた。だが、本国で公開後、興収は振るわず、批評的にも散々な結果を残したことが影響したのか、間もなく一覧から削除され、2009年の晩春にDVDで直接リリースされた。予定表に載っている時点から、設定に惹かれて興味を持っていたので、遅ればせながらレンタルで鑑賞した次第である。
imdbでもかなり低い点数をつけられているので、かなり覚悟を決めて観たのだが――これが存外、面白かった。
酷評された原因は解る。SFとして眺めると、異星人たちの価値観や地球の社会に対する理解度があまりに雑に描かれている。異星人の肉体的構造は地球の人間とサイズ以外はほとんど変わらないのに、宇宙船であるデイブの動かし方、表情の作り方に難儀する、というのは説得力に欠けるし、予め映像などをリサーチして地球に溶けこめるようにしていたわりには本質をまったく理解していないのも異様すぎる。異星人が地球に目をつけた理由はユニークでいいのだが、基本的な設定があまりになっていない。
だがそれは、本篇を正しいSFとして鑑賞しようとするから感じる問題点であり、そういう“前提”のうえで描かれるコメディ、と捉えれば充分に面白い。
序盤こそ少々行きすぎた、かつ整合性の乏しい“宇宙船”の行動に眉をひそめるが、それを約束として受け入れられれば、あとはそれを活かしたエディ・マーフィの“パフォーマンス”で存分に笑いを堪能できる。その場その場で会話のニュアンスや動きの意味合いを大雑把に吸収して頓珍漢な受け答えをし、方々で珍騒動を起こすあたりなどはまさに彼の本領発揮であり、理屈を抜きにして――というより、理屈を抜きにするからこその面白さがある。
“宇宙船”が地球の人々との珍妙な交流で笑いを取っているあいだに、船内のクルーたちのあいだで生じる騒動や変化を描いているが、こちらもSFとして見れば基礎の雑さが目立つものの、地球の文明を知らない人々、というお約束に基づくコントとしては愉しい。次第に地球の文化に影響を受けて発展してしまう、というくだりも、時間の長さを思うと少々過剰ではあるが、コメディならではのお約束を忠実に押さえている証拠でもある。このノリに気を許せる人ならば、快いほどのテンポを保っている。
いささか残念なのは終盤に差しかかったあたりの展開である。もともと異星人たちの価値観や文化的基本が明確でないせいもあって、ここで急激にある人物が激昂した感覚がいまいち伝わりづらい。いちおう伏線は張ってあるものの不充分なので、ここで急におかしな形でシリアスが紛れ込んだように感じられるのだ。無論すぐにこれもコントの延長だと解るが、どうしても笑いより苛立ちを誘われてしまう。しかし最後でもういちど完全なコメディに引き戻しているので、途中でノリに馴染んだ人なら爽快な余韻を得ることが出来る。
駄目なところが多い、というよりSFを純粋に愛する者なら許し難いくらいいい加減な組み立てだが、エディ・マーフィの“動き”で見せる面白さを期待している人なら、1時間半存分に堪能できるだろう。あとには何も残らないが、だからこそ気軽に楽しめる、そういう意味ではいいコメディ映画である――とにかく、設定の繊細さや細部の整合性が気になる人は観ない方が無難だ。
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