原題:“Sabotage” / 監督:デヴィッド・エアー / 脚本:スキップ・ウッズ、デヴィッド・エアー / 製作:デヴィッド・エアー、ビル・ブロック、ポール・ハンソン、パラク・パテル、イーサン・スミス / 製作総指揮:ジェイソン・ブルーメンフェルド、アントン・レッシン、アレックス・オット、ジョー・ロス、アルバート・S・ラディ、サーシャ・シャピロ、スキップ・ウッズ、ジェフ・イム / 撮影監督:ブルース・マクリーリー / プロダクション・デザイナー:デボラ・ハーバード / 編集:ドディ・ドーン / 衣装:マリー・クレア・ハナン / キャスティング:リンジー・グラハム、メアリー・ヴァーニー / 音楽:デヴィッド・サーディ / 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、サム・ワーシントン、ジョー・マンガニエロ、ジョシュ・ホロウェイ、テレンス・ハワード、マックス・マーティーニ、ケヴィン・ヴァンス、ネッド・ユセフ、ミレイユ・イーノス、マーティン・ドノヴァン、オリヴィア・ウィリアムズ、ハロルド・ペリノー、キャサリン・ダイアー、パトリック・ジョンソン / オープンロード・フィルム/QEDインターナショナル/クレーヴ・フィルムズ製作 / 配給:Broadmedia Studios
2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間49分 / 日本語字幕:? / R15+
2014年11月7日日本公開
公式サイト : http://www.sabotage-movie.jp/
TOHOシネマズみゆき座にて初見(2014/11/26)
[粗筋]
アメリカ麻薬取締局=DEAにおいて、“麻薬戦争の神”とまで呼ばれたジョン・ウォートン(アーノルド・シュワルツェネッガー)率いる部隊が、失態を犯した。麻薬組織に突入し、資金を押収するはずが、隊員のひとりスモーク(マーク・シュレーゲル)を被弾により絶命させてしまったうえ、肝心の資金も途中で失ってしまったのである。DEAの上層部はチーム内の人間による犯行の可能性を考慮し、リーダーであるウォートンには監視をつけ、他の隊員にも謹慎を命じる。
半年にわたって内偵は続けられたが、DEAはとうとうチームの犯行である、という裏付けが得られず、彼らの謹慎を解いた。欣喜雀躍する一同だったが、しかし半年のブランクは、麻薬犯罪の最前線にいた彼らにとって非常に痛いものだった。久々の演習では失態を繰り返し、チームの中に不協和音が生じる。
だが、本当の悪夢はここからだった。それでもチーム再結成を祝し、浴びるほど酒を飲んだその夜、隊員のパイロ(マックス・マーティーニ)が寝泊まりしているキャンピングカーもろとも貨物列車に轢かれ、ミンチも同然の状態で発見されたのである。
現場検証に現れたアトランタ市警の刑事キャロライン(オリヴィア・ウィリアムズ)も、最初は事件性を疑っていたわけではなかった。だが、チームの関係や事情を探っているまさにそのとき、ネック(ジョシュ・ホロウェイ)が天井に釘付けで殺された現場を発見してしまう。
更に、先の失態で職務に対する忠誠心を失い、退官していた元隊員トライポッド(ケヴィン・ヴァンス)もまた、キャロラインがウォートンに案内されて訪ねたときには既に屍体となっていた。
トライポッドが暮らす山小屋の近くには、ウォートンが仕掛けた罠にかかったと思しい屍体も残されていた。遺体に彫られた刺青は、その正体が麻薬組織の暗殺者であることを示している――やはり、ウォートンたちのチームが過去に対峙した麻薬組織の復讐によるものの可能性が高い、と考えられた。ウォートンたちは、今度は新たな犠牲者とならぬよう、なりを潜めるしかなかった。
しかし、果たしてこれは本当に、麻薬組織による犯行なのだろうか? キャロラインは何故か、釈然としないものを感じていた……
[感想]
いざ公開されたときにはほとんど表立っては言及されていない(もしかしたらパンフレットなどでは触れているのかも知れないが、今回は買わなかったので確認できない)が、実は本篇、とある有名な推理小説をもとにしている、という点が話題となっていたことがある。
それ故に私はこの作品を先入観バリバリで鑑賞してしまったのだが、これはちょっと失敗だったかも知れない。あえて名を伏せた作品はミステリ界隈ではかなり有名で、もちろん読んでいる私は、その事実に却って惑わされてしまった。
ただ、冷静にミステリとして評価すると、決してうまく出来ているわけではない。真相には多少なりとも驚きがあるが、振り返ってみたとき伏線が充分とは言いがたいし、疑惑の追及が少々手ぬるいので、もっと衝撃を増すことも可能だった結末が和らいでしまっている感も否めない。
しかし、ミステリとしてのムードの醸成と、それをアクションの融合はかなりうまく行っている。残酷な描写を和らげることなくかなりむき出しにし、惨たらしい遺体を見せつけて、犯行の残虐さと共に、ウォートンらが身を置く世界の過酷さを垣間見せる。数は多くないが、スピーディで歯応えのあるアクションが繰り広げられるあいだも、そのハードな描写が閃いて印象を強める。エンタテインメントの匙加減としては絶妙だ。
本篇で感心したのは、シュワルツェネッガーの立ち位置である。映画界復帰に際してふたたび身体を作ってきたようで、本篇ではシャツ越しだが盛り上がった胸板と袖から溢れんばかりの二の腕が頼もしいが、そうは言ってももう60代後半である。アクションでどこまで無理が利くか、という年齢だから、というのもあるのだろう、それほど派手な見せ場はない。しかし、部隊のリーダーとしての貫禄、家族を持つ人間としての苦悩を滲ませながら、要所要所で力を発揮するさまは、彼の経歴がもたらした説得力を得て重みがある。演技力に恵まれている、というイメージはないが、年輪を表現に活かした役作りは、自らの扱い方をよく理解している。
そして、謎が解かれたあと、鬱憤を晴らすかのように繰り出されるから、最後のアクションが鮮烈に印象づけられる。痛快であり、かつ物悲しい余韻が残るのも、アクションとサスペンス、双方の積み上げが出来ていたが故だ。
前述したように、本篇はミステリ愛好家の目には伏線が乏しく映る。アクション映画ファンには、銃撃戦のリアリティ、インパクトは認められても分量の面で物足りないように思える。結果として中途半端な印象を受ける可能性は高い。だが、観ているあいだの牽引力と見せ場の効果の大きさ、バランスの確かさは評価されて然るべきだろう。ちょっと刺激は強いし、割り切れない想いをするかも知れないが、よく整ったエンタテインメント作品である。
関連作品:
『フェイク シティ ある男のルール』/『ソードフィッシュ』/『ダイ・ハード/ラスト・デイ』
『ラストスタンド』/『大脱出』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『ターミネーター4』/『アバター』/『タイタンの逆襲』/『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』/『プリズナーズ』/『キャプテン・フィリップス』/『ワールド・ウォーZ』/『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』/『アンナ・カレーニナ』/『ゼロ・ダーク・サーティ』/『しあわせの隠れ場所』
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