1998年ともなると趣がちょっと違う。

 7月に入って3度目の新・午前十時の映画祭鑑賞のために、TOHOシネマズ日本橋に赴きました。このひと月は1週間ごとの入れ替えなので、とにかく早めに押さえておく、と考えた結果、とりあえず月曜日に行く、というのが習慣になりつつある。

 今期の作品は、ウィリアム・シェイクスピアの代表作『ロミオとジュリエット』完成の背景に彼自身のロマンスがあった、という発想を軸に、当時の実在の人物を織り交ぜて演劇の世界の悲喜こもごもを情感豊かに、そしてコミカルに描き出した恋におちたシェイクスピア』(UIP公開時配給)

 この作品の公開された1998年はまだ映画道楽にハマるより以前でしたが、何故かこの年に限ってアカデミー賞にちょっと関心があって、監督賞を『プライベート・ライアン』でスピルバーグが獲得したのに作品賞を攫っていったことを妙に強く記憶していました。以来、何となく気にはなっていたものの、時代物ロマンスだから、と何となく敬遠していた作品。

 しかしこれ、恐ろしく私好みでした。優れたフィクションの内容を軸に別の物語を構築する、という発想自体がそもそも大好きで、本篇はそれを『ロミオとジュリエット』というあまりにも親しまれた題材で、しかも完璧にやってのけている。紆余曲折に飛んだ物語が、シェイクスピア作品と絶妙にリンクしていく様にはミステリめいたカタルシスさえ感じます。時代物としての佇まいも美しく、これは確かにアカデミー賞に値する傑作だったと思います。監督賞をスピルバーグに譲ったのは、そのくらい激戦だった、ということの証左でしょう。ちなみに当時、私は『シン・レッド・ライン』が本命視されている、と聞いていた記憶がある。

 それにしても、この映画祭では1990年代というのは間違いなく最新のほうに属するわけですが、ここまで来ると色々と趣が違う。エンドロールは長めだし、『カサブランカ』や『アフリカの女王』のように主要キャストのほとんどが故人ということもなく、メインはむしろ現役バリバリのひとばかり。フィルムからデジタルに変えているのは一緒なので、静止画が揺れて見えるのは一緒でも、画面は遥かにクリア。私にはあんまり“古さ”を感じない1本でもありました。

 次の作品は『八月の鯨』です。スケジュールの状況次第ではありますが、前の『アフリカの女王』同様、今週中に新宿で押さえてこようか、とも思ってます。その方が楽ですしね〜。

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