『残穢 −住んではいけない部屋−』舞台挨拶&ティーチインつき上映at第28回東京国際映画祭inTOHOシネマズ六本木ヒルズ。

 平素、日曜日に映画を観に行くことはあまりありませんがイベント上映となれば別。今年の東京国際映画祭で、何よりも押さえたかった1本ともなればなおさらです。そんなわけで、午後に自転車にて六本木へ……通り道が官公庁街を経由しているため、平日よりも走りやすいことに気づいたりしますが、六本木付近になるとやっぱり人混みにうんざりするのだ。

 本日の作品は、小野不由美の傑作“怪談”小説を、『白ゆき姫殺人事件』『予告犯』、古くは『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの構成にも携わっていた中村義洋監督が、竹内結子橋本愛を主演に招いて実写化したリアルホラー残穢 −住んではいけない部屋−』(松竹配給)。基本的に、日本での劇場公開が決まっているものはあまり拾わない、という方針でこの映画祭と付き合うつもりでいたんですが、どーしても早く観たかったもので、ほぼ意地でワールドプレミアとなる回のチケットを確保しました。

 上映開始前に舞台挨拶です。主演の竹内結子橋本愛、それに中村義洋監督が登壇。時間はやや短めで、通訳も挟まねばならないので駆け足ではありましたが、撮影の雰囲気は伝わりました。監督は「まず暗いスタッフを集めた」と言っていますが、良質のホラー映画の現場での例に漏れず、現場の雰囲気は良かったらしい。脚本を読み切るのに数週間を要し、司会者曰く「試写で悲鳴を上げていた」竹内も現場では(そもそも怖い場面にはあまり参加していないせいもあって)リラックスしていたようです。橋本に対しては司会者から「撮影中に怖い体験は?」という質問があったのですが、特にないけど、家に帰ったらガスが点けっぱなしだった、という話に慄然としました。いや笑いましたけど洒落になってないだろそれは。

 それからいよいよ本篇へ。とりあえず、完璧に近い映像化、と断言していいと思います。原作よりもスタートの時代設定が現代寄りになっていたり、実名で登場する作家が別のキャラクターになっていたり、という潤色はあれど、肝はしっかりと押さえている。一般的なホラーのように、怪物や殺戮の現場に直接遭遇しているわけでもないのに、じわじわと恐怖が蓄積していく。気づけば、大したことでもないはずなのに、そこから恐怖が滲んでくる感覚に慄然とするはずです。ラストに至って、映画ならではの趣向が付け加えられていますが、それも原作の備える“タチの悪さ”を踏まえている。原作ファンには安心の1本……ですが、それ故に、いちど観たら「もうイヤ」と言いたくなるかも知れません。それほどに圧倒的な傑作。

 上映後は中村監督によるティーチイン。如何せん上映後ですので、色々とネタばらしもしているので詳述は避けます。私は手を挙げませんでしたけれど、他の方に対する回答から、ちょっと引っかかっていたポイントも狙いだったことが判明して非常に腑に落ちました。

 なお、このあとまだ数本、映画祭の作品を鑑賞する予定ですが、舞台挨拶やティーチインつきのものはこれだけです。観たい作品とスケジュールを必死に調整した結果、見事にイベント抜きの回だけになってしまったのです……まあいいの。そのほうが気楽に観られるし。

 ちなみに、本公開後にもう1回劇場で観て、たぶん映像ソフトも買っちゃうだろうな、といまから言えるくらいに本篇がお気に入りの私ですが、そんな私でも帰宅後、入浴中にずーっと後ろが気になって仕方ありませんでした……この引きずる感じこそ傑作の証、なんですけどね。

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